トップレベルの日本の操船学は自動操縦をめざして進歩する
操船学とは船の動きを力学的に調べ活用する学問
大きな船はすぐ止まれないし、すぐには曲がれません。船は水の上を走ることから、水と空気の両方の影響を受けます。その運動は車や飛行機より複雑なのです。操船学は船という物体の動きを力学的に調べ、実際の操縦に生かす学問です。船で海に出たり、大型水槽で模型船を使い実験したりすることでデータを集め、船体運動の特徴を探ります。
日本は四方を海に囲まれた島国ですし、重量ベースでいえば輸出入の99%を船による輸送に頼っているので、沿岸部には実に多くの貨物船が行き交っています。と同時に漁業も共存しており、多くの漁船が漁をしているのも日本の特徴です。そうした必要から、日本の操船学は世界的にもトップレベルと評価されています。
海の交通の安全を守るために
日本の沿岸では、わずか数メートルの漁船からその100倍もの長さがある輸送船までがそれぞれ目的地へと向かっています。陸上に置き換えてみれば、大型トラックにバス、そしてスポーツカーや耕運機までが同じ道路を走っているような、危険な状況なのです。
技術の発達によって電子機器はずいぶん進化しましたが、自分の位置の把握だけでは、海上のスムーズな運航は果たせません。事故を未然に防ぐための適切なルールや対策が求められているのです。交通対策を考え、評価方法を立案し、指標を作るなど、海上の安全を守るための海上交通工学も求められていることの一つです。
未来の船につながる研究
鉄道の動きは線路上の直線で1次元です。車は車線変更があるので準1次元といえます。船は、線路や車線がなく360度自由に航行できるので2次元です。飛行機は空を飛ぶので3次元です。しかし、3次元の飛行機より2次元の船の交通の方がシンプルかというと、そうではありません。飛行機は外からの管制で自由度が少ないのに対し、船は2次元ですが操縦者の自由度が高いからです。船の動きを研究することは、自動で安全に船を動かすという未来の技術の確立につながっています。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 海事科学部 グローバル輸送科学科 准教授 世良 亘 先生
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