海の生き物の居場所を追え! 海中の神秘を探るフィールドワーク

海の生き物の居場所を追え! 海中の神秘を探るフィールドワーク

動物の行動を知るバイオロギング

動物に電子機器をつけてその行動を調べる「バイオロギング」は、海の中でも行われています。あなたもテレビ番組などでクジラやウミガメにつけたビデオカメラの神秘的な映像を見たことがあるかもしれません。
バイオロギングには、さまざまな機器・技術が応用されています。生活の中で使われているものも多く、例えばスマホやゲーム機の中で傾きを検知する加速度計は、対象の姿勢を計測できるため「浮上しているか、潜水しているか」などがわかります。

超音波で魚の居場所を知る

海の中は目に見えずGPSも使えないため、海洋生物の場合、「どこにいるか」を知ることは大きなテーマであり、超音波を使う「バイオテレメトリー」がよく行われます。
魚を集めるために海に浮かべる人工物「浮漁礁(うきぎょしょう)」は、カツオやマグロの漁に古くから使われていますが、なぜ、どのように魚が集まるのかよくわかっていません。そこで、浮漁礁のまわりに集まるカツオの行動の調査が行われています。カツオは海からあげるとすぐに弱るので、漁船の上で手術を行い、15~30秒の短時間で超音波発信機を腹に入れて海にもどします。超音波発信機から送られてくる情報に加え、カツオの行動を解き明かすために、水温、水深、潮の流れなどまわりの環境もあわせて調査しています。

海洋開発でも大切な生態調査

バイオテレメトリーでは、超音波通信で遠隔的にデータを集めていますが、バイオロギングでは再び魚をつかまえてビデオカメラなどの機器を回収する必要があり、その回収方法も考えなくてはなりません。バイオロギング、バイオテレメトリーは対象生物や環境、目的にあわせて研究デザインを工夫することが大切です。
海洋開発を考えるうえでも生態調査は欠かせません。海洋開発には、そこにすむ生物の行動を変えて生態系をおびやかすリスクがあるからです。そのため、海洋生態系との共存を目指した、海の生物の生態調査や環境影響評価は世界中で行われています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 助教 浅井 咲樹 先生

東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋資源エネルギー学科 助教 浅井 咲樹 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

海洋計測学、魚類行動学、水産学

先生が目指すSDGs

メッセージ

海の中は陸と違って目で見ることができないため、生物の行動を知るにはさまざまな工夫が必要です。ただ、見えないからこそ魅力的で、「魚は〇〇にいて△△をしているのかも!?」と想像をふくらませるのはワクワクします。知りたいことを知るために、アイデアを出して観測技術を確立する面白さもあります。船に乗って海に出るのも、海で働く現場の方たちと交流するのも楽しいです。海や生き物に興味があるなら、一緒に船に乗って、見たことがない海中の世界、魚の世界を知るフィールドワークに出かけましょう!

東京海洋大学に関心を持ったあなたは

東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。