地球環境全体に影響する、南極海の生態系を解明せよ
南極の環境変動は地球環境の予測につながる
南極海の生態系は、日本にも世界にも影響を与えています。南極海にいるハダカイワシという魚をエサにして子育てをしている、ハシボソミズナギドリという鳥がいます。日本にもやってくる渡り鳥で、北太平洋まで行き、また南極海へと帰っていきます。南極海の生態系が渡り鳥や大型動物などの体を作り、地球を駆け巡りながら、さらにその先の食物連鎖につながっているのです。南極の環境変動は、生態系に影響を与え、海面上昇を招くなど、地球環境の変動を予測するバロメーターになります。それだけ重要な南極海に関する生態系ですが、まだ十分に解明されていない部分が多いのです。
南極海の生態系全体の解明をめざす
今、海洋物理学や化学、生物学などの専門家による国際合同研究チームが結成され、南極海の生態系を解明しようとしています。これまで、南極海の生態系の鍵となる生物はナンキョクオキアミと考えられていましたが、それでは説明できない点もあり、最近ではハダカイワシも食物網において重要な役割を持つことがわかってきました。孵(ふ)化したばかりのハダカイワシの仔魚の消化管を調べると、プランクトンの死骸や糞などの有機物が凝集した「マリンスノー」を食べていることなどもわかってきました。産卵場所は、海氷近くの生産性の高い場所だと想定されています。
未来に続く研究者を育てる
南極の海氷は、冬には地球全体の海に対して10%の広大な面積を覆い、夏になるとその約80%が融けてしまいます。このように環境の季節変化が大きいことが特徴です。春から夏にかけて海氷が融け出すとき、氷の中の微小な動植物が放出されます。この毎年繰り返されるイベントは、海洋生態系に大きなインパクトを持つことが考えられますが、まだ不明な点が多く残されています。こうしたことをひとつずつ解明することしか、全体の解明への道はありません。南極海のすべてが解明されるのは、ずっと先の未来になるでしょう。その土台を作ると同時に、未来の研究者を育てることも重要です。
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先生情報 / 大学情報
東京海洋大学 海洋資源環境学部 海洋環境科学科 教授 茂木 正人 先生
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