海洋生物の力で健康に! 海藻のシワヤハズで炎症を抑制
海洋生物の成分を健康機能の調節に応用
海洋生物に含まれる成分の機能性や性質を調査し、人の健康に役立てようとする研究が行われています。例えばヒトデの毒から血を固めない成分を見つけたり、二枚貝のエキスに肝機能障害を抑制する作用を見つけたりと、人の健康機能の調節に応用できる可能性をもつ成分や作用が報告されています。ほかにも海藻の成分が研究されており、藻類の一種である藍藻(らんそう)の仲間には抗肥満成分があることが、またワカメやコンブなどと同じ褐藻(かっそう)群に属するシワヤハズには炎症を抑える成分があることが明らかになりました。
褐藻シワヤハズで大腸炎を抑える
シワヤハズに含まれる「ゾナロール」という成分には、炎症反応を抑える作用があります。炎症は身体を守るための反応ですが、過剰な反応では健康を害します。そうした病気の一つである潰瘍性(かいようせい)大腸炎は、薬を使ってもなかなか完治せず、何度も発症する可能性がある難病として知られています。そこで、この潰瘍性大腸炎を引き起こしたマウスにゾナロールを食べさせる実験を行った結果、炎症がある程度治まることがわかったのです。ゾナロールは抗酸化性の高いハイドロキノンと呼ばれる化合物の一種ですが、食べて効果を発揮できたことから、この成分を含む褐藻シワヤハズは健康食品や医薬品の資源としても期待されます。
海洋生物が新たな健康食品になる?
海洋生物から取り出した成分を応用する方法として、薬や食べ物への加工が挙げられます。また、加工によって成分を濃縮すれば機能性が高まるため、さまざまな病気の予防にも役立つでしょう。まだ食用になっていない海洋生物が食品として利用できるようになれば、人間の食料を増やせる可能性もあります。
しかし、食用にするためには、海洋生物の成分が人体に入っても問題がないかを実証しなければなりません。体内に入ってから成分が悪い働きをしないか、最終的に体外にきちんと排出されるのか、といった安全性に関する研究も不可欠なのです。
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東京海洋大学 海洋生命科学部 食品生産科学科 准教授 小山 智之 先生
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