肉眼では真っ暗な宇宙、電波望遠鏡では光る星間物質が見える!
見えない宇宙を見せてくれる電波望遠鏡
夜空を見上げると天の川はモヤモヤとした雲のように見えます。その隙間の暗い部分は何もない闇でしょうか。実は電波を使って観測するとその暗い部分が光っています。実は暗く見える部分には「星間(せいかん)物質」というガスやチリでできた星の材料があるのです。その多くはマイナス260度と温度がとても低く、可視光を出すことができないため肉眼では見えません。これらが出す微弱な電波を受け止め、それを見せてくれるのが電波望遠鏡です。どこに星間物質があるのか、その温度や密度、質量などを調べることができます。南米チリにあるアルマ望遠鏡がよく知られています。
ナノ単位で億や兆単位の銀河を見る
星間物質中には、主成分の水素分子の他に一酸化炭素分子(CO)、硫化水素、メタノールなどほかの物質があります。電波望遠鏡で、これらの分子が出す電磁波がいろいろな銀河でどのように分布しているのかを観測しますが、COが出す電波はより強いため、よく使われます。特に天の川銀河以外の銀河は非常に遠いので届く電波が弱く、観測するのはできるだけ強い電磁波を出す物質が望ましいわけです。分子の単位はnm(ナノメートル)で、1nmは、10-⁹メートルです。逆に銀河は10²⁰メートルといった大きさです。30桁ぐらいの単位の差がある小さな分子をもとに、広大な銀河を観測するのです。
天文学はパズルを組み合わせる謎解きのよう
ひとつの天体を数千万年、数100億年の長い間観測することはできないので、いろいろな世代の天体のサンプルを何百個と集めることで、星の一生の過程を推測しながら全体でパズルを組み合わせるようにして考察します。研究者は物理や化学の法則を使って理論的に推測をします。しかし天体は見てみないとわからないことも多くあります。予想しないものが見えてくるのも観測の醍醐味(だいごみ)です。ひとつ発見があるとそれに付随する新たな謎がたくさん出てきて、星の謎解きは尽きることがありません。
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上越教育大学 学校教育学部 学校教育研究科 教授 濤﨑 智佳 先生
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