隕石は歴史の宝庫! 火星環境変化の謎を解く
火星は赤くなかった?
現在の火星は、酸化鉄を含む赤茶けた砂に覆われた「赤い惑星」です。しかし、火星から地球に飛んできた隕石(いんせき)は、太古の火星が水や有機物などに富む惑星であったことを物語っています。さらに調査を積み重ねれば、火星の環境進化や火星生命の可能性への知見が得られることでしょう。
隕石に閉じ込められた大気
火星隕石は、古くは19世紀から回収されています。しかし、これらが火星起源だと判明したのは、アメリカの火星探査機バイキングが火星へ降り立って数年後、1980年代のことでした。
実は、火星隕石には元の天体(=火星)の大気がごく僅かに閉じ込められています。一般に、天体に他の隕石が衝突すると、地表の岩石が飛び出します(これが地球へ届いたものが隕石です)。このときの急激な加熱で、岩石の一部は溶け、周囲の大気を取り込んでガラス状に冷え固まります。隕石中の大気成分とバイキング探査機が測定した火星大気とが一致したことで、「火星起源の隕石」が認識されました。
太古の隕石×最先端の分析技術=新たな発見へ
1984年に南極で回収された「アランヒルズ84001」は特に重要な火星隕石です。この石は、40億年前の火星の水から晶出した炭酸塩鉱物を保存していました。こうした例は他に無く、アランヒルズ84001は「唯一の40億年前の火星試料」として注目されています。
発見から約40年間、世界中の科学者がこの石を調べてきました。しかし、過去に主流だった破壊分析(石を溶かしたり燃やしたりする分析法)では、南極の物質や実験室での付着物が混入してしまうなどの問題ありました。
最先端の分析技術を駆使すれば、隕石を壊さずに内側の「フレッシュな情報」のみを取り出すことが可能です。例えば、兵庫県にある大型加速器SPring-8を用いた研究で、この石から有機窒素化合物が検出され、40億年前の火星表層が還元的であった可能性が示されました。多角的な研究により、たった1個の石からも火星の歴史を読み解くことができるのです。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 地球惑星システム学科 助教 小池 みずほ 先生
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