宇宙誕生の謎に迫る「レーザー技術」
ギネス記録に貢献! すばる望遠鏡のレーザー技術
レーザーを使った技術は、プリンタや通信、自動車の自動制御システム、人工衛星などさまざまなところに使われています。実は、宇宙誕生の謎を解く研究でもレーザーを使った望遠鏡が活躍しています。そのひとつが、ハワイのマウナケア山頂にある「すばる望遠鏡」です。すばる望遠鏡は、129億光年という「もっとも遠い銀河」の観測でギネス記録を樹立しました。
「レーザーガイドスター」で暗くて遠い星も観測
通常、地上から宇宙を観測すると画像がぼやけて見えるものですが、すばる望遠鏡は常識を覆す鮮明な画像を届けてくれます。どのような仕組みなのでしょうか?
宇宙から届く光は、大気のゆらぎの影響を受けて屈折にムラがでるため、地上に届くのに時間差が生じて画像がぼやけて見えます。そこで、この問題を解消するために、光の到達時間を高速制御でリアルタイムに補正する「補償光学」という技術が使われています。これまでは、観測対象の近くの明るい星を基準にして、大気のゆらぎを検出していました。そのために観測できる星が限られていたのですが、すばる望遠鏡では、強力なレーザーを上空90kmにあるナトリウム原子の層にあてて「レーザーガイドスター(人工星)」をつくり、これを基準に大気のゆらぎを検出したのです。おかげで非常に遠くて暗い天体の観測も可能になったというわけです。この観測システムには、数々の日本の最先端技術が貢献しています。
さらに遠くの星の観測にも期待
宇宙の始まりは、137億年前に起きた高温・高密の状態の大爆発(ビッグバン)からと言われていますが、すばる望遠鏡が見つけた129億光年離れた銀河は、宇宙誕生から7.5億年後のもの、つまり観測史上最古の宇宙の姿です。今後も、さらに遠くの銀河などいろいろな星が鮮明な画像で観測できると期待されています。
レーザーを使った技術は、129億年前の世界、宇宙誕生の謎をも照らし出すことができるのです。
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