「森のようちえん」の教育的効果とは?
屋外で学ぶ「森のようちえん」
デンマーク発祥の「森のようちえん」は、自然を活用し子どもの主体性を大切にする幼児教育を行う団体です。森のようちえんが子どもに与える影響として、心身の発達促進などが期待できます。例えば、活動場所が屋外なので、運動量が増え体力が向上します。また、既存のおもちゃではなく枝や土など自然の中にあるものを使うので、遊び方を考える想像力が豊かになります。活動内容や遊びのルール作りなどについて友だちと意見を交わす場面も多いので、コミュニケーション能力や協調性も身につきます。
レジリエンスを育む自然保育
森のようちえんは日本全国に約200ありますが、さらなる普及のためにも教育的効果を学術的に立証することが求められます。そこで2019年に、森のようちえんを卒園した子どもの保護者と、通常の幼稚園や保育園を卒園した子どもの保護者にアンケート調査を実施しました。調査項目は自尊感情のほか、レジリエンスと呼ばれる粘り強さやポジティブさ、立ち直る力などです。すると森のようちえんを卒園した子どもは自尊感情やレジリエンスが高いという結果が得られました。ただ、家庭環境など子どもに影響を与える要因はほかにもあるため、今後も継続した調査が必要です。
安全管理と主体的活動
自然保育では安全管理も大切です。教育者はリスクとハザードという2種類の危険に対応しなければなりません。リスクとは、子どもの挑戦にともなって生じる教育的意義のある危険です。例えば調理中に包丁で指を切るといったことです。これは道具の扱い方に気をつければ子ども自身で回避できます。一方、ハザードは川の増水など子どもには避けようがない危険です。そのため、現地の下見や情報収集などの安全管理が重要です。
森のようちえんは安全を確保した上で、子どもたち自らが主体的に活動できるよう、カリキュラムに余白を持たせてあります。このため、教育者がすべてを決めることなく、活動場所や内容も子どもたちが話し合って決めるなど、柔軟性の高い保育を提供できるのです。
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先生情報 / 大学情報
上越教育大学 学校教育学部 学校教育研究科 教授 山口 美和 先生
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