見えないものを見る~フォトン検出器~
林の中から1本の木を見つけ出す
対象物の中に、どんな物質が混ざったり隠れたりしているのかを調べるときには、検出器という器具を使います。例えば、対象物にエックス線を当てると電子が放出される性質を利用し、そのエネルギーを調べることで含まれる物質を特定できます。それぞれの物質には特有のエネルギーの配列があります。山なりに配列されるピークの場所で物質を特定するのですが、さまざまな物質が混ざっていると、配列が重なり合うためにピークを特定しにくくなります。そこで、より性能のよい検出器を使うことによって、それぞれの山を細くし、中に含まれるピークを分別しやすくします。いわば、林の中で一体化している木々を、一本ずつ見えるようにするのです。
フォトンのエネルギーを感知
そのために使用するのが「フォトン検出器」です。フォトンとは光の粒子のことです。1905年にアインシュタインが「光は波長に応じたエネルギーを持つ粒である」と発表しました。つまり、光は波の性質と、粒子の性質の二面性を備えています。例えば、お風呂に入って暖かいと感じるのは、振動する水分子のエネルギーが体に当たるからです。同じ理屈で、太陽から降り注ぐ光を暖かいと感じるのも、光の粒子がエネルギーを持っているからと考えられます。フォトンのエネルギーは、非常に感度のよい検出器でなければ測れません。性能の限度を乗り越えるため、非常に低い温度に冷却したときに電気抵抗が急激にゼロになる「超伝導」の状態で動かす検出器を使います。
フォトン検出器で宇宙の謎を解く
宇宙の中で水素や酸素など私たちがよく知っている物質は全体の数%に過ぎず、残りの大部分は「ダークマター」、「ダークエネルギー」で占められていると考えられています。フォトン検出器を応用することで、宇宙から降り注ぐ宇宙線からダークマターを検出できるかもしれません。見えないものを見えるようにすることで、さまざまな分野の研究を推し進め、謎を解明することができるのです。
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埼玉大学 工学部 電気電子物理工学科 准教授 田井野 徹 先生
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