光、ナノ、そしてVRの世界へ:もみ殻からLED!?
植物にガラスの成分が含まれている?
笹の葉を触ったとき、指を切ってしまったことはありませんか? イネ科の植物にはガラス成分が含まれ、その葉も鋭く切れやすくなっているのです。米を生産する時に廃棄してしまうもみ殻も、その約20%がガラス(シリカ、SiO₂)です。そのもみ殻から、LEDを製造することに成功しました。植物由来、バイオ系の天然素材を活用したLEDの製造は、世界初の成果です。
液晶、有機ELを超える量子ドット
近年、タブレットやTVに、液晶や有機ELより鮮やかな色彩と発色を実現できるといわれる、量子ドットディスプレイが実用化されています。量子ドットとは、大きさが数ナノメートルになった半導体のナノ粒子で、LEDや太陽電池などの材料として注目されています。しかも、青~赤まで、効率よく発光します。ただし、現在市販されている量子ドットディスプレイには重金属が使用され、環境への負荷が高いことが懸念されています。一方、半導体であるシリコンは重金属ではありません。しかも、もみ殻から作ったシリコン量子ドットによるLEDを使用すれば、廃棄物をリサイクルできます。安全・安心・安価な発光材料として期待されているのです。
ナノの世界で起こること
ガラスから合成できるシリコンという物質は、通常ほとんど光を発しないため、発光材料としては不向きでした(発光効率0.01%)。しかし、シリコンをナノ粒子にすると、高効率(発光効率80%)の発光を示し、しかもフルカラーになることがわかりました。ナノという極微の世界では、物質の性質が大きく変化するため、ナノテクノロジーは大きな研究テーマとなっています。
こうした量子ドットの開発が進んでいくと、小さく折りたたんでポケットに入れられる大画面のスマートフォンや、直接肌に装着するデジタルヘルスケア(健康管理センサ)などが当たり前になるでしょう。更にVR(仮想現実)、AR(拡張現実)のディスプレイやゴーグルへの展開も、期待されています。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 理学部 化学科 教授 齋藤 健一 先生
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