子どもの権利を守るために親権のあり方を考える
両親の離婚で一番損をするのは子ども
日本では、未成年の子どもがいる夫婦が離婚するときには、父親と母親のどちらが親権を持つかを決めなければなりません。「単独親権」と言われる制度です。それまで父親と母親の2人が持っていた権利・義務を、急に片方の親が失うのです。親権を失った親は通常、子どもと月に1回程度の面会交流を継続しながら離れて暮らし、養育費を送ります。しかし中には、面会交流をさせない親や、養育費を支払わない親がいます。近年問題になっているのが、そういった対応をしてもまかり通ってしまうこと、強制力を持った制度がないことです。一番損をするのは、子どもです。
日本が甘いのか、海外が厳しいのか
日本以外の先進国は、離婚後も両親が親権と義務を持ち続ける「共同親権」を原則としています。単に両親の権利が守られるというだけにとどまらず、子どもの権利も守られます。例えばアメリカでは、養育費を支払わない、面会交流をさせない親は、制裁金や拘禁を科せられます。これは厳しい措置でしょうか。養育費も面会交流も、子どもの権利を守るために欠かせないものであるはずです。根底には、離婚する親の都合は子どもには関係ないという考え方があります。
あらわになった課題を社会の問題として考える
社会や価値観の変化などにより、日本でも離婚が増加傾向にあります。それにともない、養育費や面会交流だけでなく、親権の争い、子どもの連れ去り、虐待、夫婦別姓の是非など、さまざまな問題があらわになってきています。1990年に発効された国連「児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)」には、「児童の最善の利益が主として考慮されるものとする」という条文があります。同条約を批准している日本は、果たしてそれを実践できているでしょうか。1つひとつの家族、そして子どもたちを守るため、「家族法学」ではこうした問題を民法の中で考えていきます。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
関西学院大学 法学部 教授 山口 亮子 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
法学、家族法学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?