映像を使って社会課題を解決するには?
調査・分析・発信手段としての映像
ドキュメンタリーをはじめ、社会の現状と課題を明らかにすることを目的とした映像コンテンツは多数制作されています。問題提起に留まらず、解決するためにも映像を役立てることはできないか、という研究がまだ少数ながらも進められています。例えば、映像を通じて地方と都心との関係を考えるプロジェクトでは、地方の高齢者が、かつて中心的な世代として活躍していた時代の経験や知識、その地域に住まうことの魅力を、映像を使って取材します。その映像を当事者間や取材した人同士で見ながら分析を進め、抽出された価値を外部に発信することで、世代間交流や関係人口の創出につなげます。映像は、リサーチの手段、分析の手段、魅力を伝える手段と、段階ごとに意味を変えながらその役割を果たし、調査・分析・発信のサイクルは続いていきます。
デザイン学と映像制作を結びつける
このようなアプローチは、デザイン学という学問領域で注目されているものです。ここで言う「デザイン」は、意匠などの狭義のものだけではなく、「新しい社会課題を見いだしながら価値を創造していくプロセスにデザインを位置づける」という広義の意味を持ちます。従来は、デザイン学で語られる内容と、実際にコンテンツを製作する分野が、並走しつつも重なりを持てずにいました。両者をつなげていくことが、社会課題の発見や解決に寄与する映像のあり方です。
地域の映像アーカイブの利活用
今は高齢者ばかりになってしまった地域にも、その人々が現役世代のときに大切な家族にカメラを向けた、個人による映像がたくさん眠っています。撮られた当時は近しい者の中だけで活用されていた映像が、時間の経過とともに公共財的な位置づけに変容していきます。過去の価値を伝えるためのみならず、未来を考えるための材料にもなり得るのです。これは、地方の価値を考えるうえで大切な点であり、過去に作られた映像をどう利活用していくかという研究が、住民や自治体などと共に進められています。
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