街並みを守り、地球にもやさしい「リノベーション」の魅力とは
建て替えからリノベーションへ
以前の日本では、木材が豊富だったこともあり、建物が古くなったら壊して建て替えるという考え方が一般的でした。しかし現在は資源を守るため、今ある建物をいかに長く使っていくかが重要になってきています。
建物のリノベーション(改修)は、自由に一から建てる新築に比べて、形状や法律上の制約がありますが、資源を守るほかにもコストを抑えられることや、街の景観の保存といった点で優れています。こうした建物の長寿命化についての研究が行われています。
昭和期の住宅を福祉施設に
リノベーションの研究には、これまでに行われた様々な事例についての調査・分析が欠かせません。調査の際には、現場へ赴いて建物がどのようにリノベーションされたのかを調べるだけではなく、利用者の行動や意識を細かく観察することも大切です。
このような研究を背景に、築40年近い昭和期の住宅から障害者の福祉施設へのリノベーションが行われました。当時の住宅ではバリアフリーの概念は浸透していなかったので、様々なバリアーの解消が必要でした。道路から家に入る段差にはスロープが付けられ、扉の幅は車いすが通れるように広げられました。介護ができる広い浴室もつくられました。
福祉施設は、新築の場合でも利用者がなじみやすいように住宅のようなしつらえで作られますが、リノベーションでは住宅そのものの雰囲気を残せる点が大きなメリットです。また、施設運営は非営利団体が多いことから、新築に比べてコストを削減できる点も、大きなメリットであるといえます。
リノベーションの指針づくり
リノベーションはもとになる建物の状態がそれぞれ異なるため、あらゆるリノベーションに対応できるような設計の手順書はありません。設計者が自身の経験をもとに行っているのが現状です。しかし、今後リノベーションの案件はますます増加します。様々な施工者が関わる中、質の高いリノベーションを安定して提供するためには、設計者の持つ経験を共有できるような設計の指針づくりが求められています。
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先生情報 / 大学情報
関西学院大学 建築学部 准教授 飯田 匡 先生
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