子どもだって自分になされる医療行為を知る権利がある

子どもだって自分になされる医療行為を知る権利がある

子どもへのインフォームド・アセント

子どもは、注射を受ける機会が少なからずあるでしょう。その際、子どもが怖がるのを心配するあまり、保護者の中には散歩だとうそをついて病院に連れてきたり、痛い処置を隠したりするケースがあります。また医療関係者も、保護者にだけ内容を伝えて医療行為を行うことが少なくありません。しかし、日本は1994年に子どもの権利条約に批准したことから、医療の場であっても子どもは大人と同様に一人の人間としての権利が認められています。つまり、大人と同様に子どもの場合も「インフォームド・アセセント(説明を受けて納得の上で治療に同意すること)」が適用される必要があるのです。

子どもの知る権利の尊重

注射や採血など日常的なケアについて、医療従事者が子どもに説明しているかを調査する取り組みが2000年初期から進められていますが、まだ全国的な普及には至っていないのが実情です。海外では、子どもにも病気や処置の内容について伝えることが多い一方、日本の場合は、「言わないのが子どもへの優しさ」という考えが存在しているのも普及を遅らせている一因だと推測されます。しかし、1930年代に発表された海外の論文では、治療の内容を隠していることが子どもに伝わると、その子どもは自分が悪いことをしている、保護者に迷惑を掛けているという気持ちになり、情緒的なゆがみが生じるとされています。そのため、子どもに正しい情報を与えて、治療に前向きに取り組んでもらうことが重要です。

今後の課題は

現在、小児看護ケアモデルの作成と、その普及活動が行われています。このモデルには、難しい説明が理解できない子どもに対して、模型や人形を使って情報を伝える技術なども盛り込まれています。一方で、少子化の影響により小児科専門病棟の運営が難しくなってきており、専門的な小児看護師の育成が難しいという現状があります。混合病棟の看護の中で、小児看護の知識をどのように習得させていくかも新たな課題となっています。

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県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 看護学コース 教授 松森 直美 先生

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メッセージ

どんな職業をめざすとしても、やりたいという思いがある上で、本当にやれそうなのか自分の感覚で確かめることが大切です。看護については、職業体験を受け入れてくれる病院や学校があります。看護師をめざす理由として、手に職がつくからと親や先生に勧められたというケースもありますが、ただそれに従うだけでなく、それを受けて自分で行動し、主体的に取り組むようにしましょう。選んだ道を、自信をもって進んでいくためにも、自分の適性を確かめるためにも、職業体験にぜひ参加してもらいたいです。

先生への質問

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県立広島大学は、教育、研究、地域貢献、国際交流のいずれにおいても公立大学として一級の大学になっています。「主体的に考え、行動し、地域社会で活躍できる実践力のある人材の育成」を目標に、教養教育では、大学4年間の学士課程教育を通じて実施する「全学共通教育科目」を設定するとともに、専門教育においては、教養教育との連携を図りながら、「専門科目」を系統的に設定することにより、バランスのとれた教育内容を提供していきます。