交通ルールは誰が決める? 行政法から見える社会の仕組み
「行政法」とは行政関連の法律約2000本の総称
社会基盤は、行政が作ったルール「行政法」の下に成り立っています。といっても、憲法や民法、刑法といった六法のように、行政法という名の法律はありません。約2000本もの法律で成り立つ行政ルールの総称を「行政法」と呼んでいるのです。行政法は、身近なところに関わっています。緊急事態宣言に関わる新型コロナウイルス対策の特別措置法も、行政法です。街づくりに関わる建築物や商業施設の規制も行政法の分野です。
道路交通法の規制は誰がどんな理由で決めている?
最も身近な行政法の一つが、道路交通法でしょう。徒歩や自転車で通行するときもそうですが、自動車の運転免許を取得すると、これまで以上に道路標識を意識する機会が増えるでしょう。日本の道路には、さまざまなルールが設けられています。一方通行、駐車禁止、速度規制などです。しかし世界に目を向けると、そのような道路ばかりではありません。例えばドイツの高速道路「アウトバーン」の速度は、基本的に無制限です。日本ではなかなか考えられないことですが、ドイツでは高速道路の速度制限をめぐって、裁判で争われたこともあります。では、なぜ日本の道路にはさまざまな規制があるのでしょうか。それを理解するためには、誰がどのような理由で交通ルールを定めているかを知る必要があります。
交通ルールを決定するのは公安委員会
日本の場合、交通ルールの決定権は、都道府県の公安委員会にあります。交通安全のため、秩序を守るために決定されることが大前提ですが、人がにぎわう街づくりのため、騒音軽減のため、環境保護のためといった理由で規制を設けるケースもあります。そういう理由なら、本来これらは住民との距離が近い市町村が担うべき課題であり、市民の意見が反映されなければなりません。ですが、今の日本では専ら公安委員会(実質的には警察)が勝手に決定しているのが現状です。このように行政法をたどると、現代日本が抱えるさまざまな課題が見えてくるのです。
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駒澤大学 法学部 法律学科 准教授 髙田 実宗 先生
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