講義No.10897 法学 政治学

交通ルールは誰が決める? 行政法から見える社会の仕組み

交通ルールは誰が決める? 行政法から見える社会の仕組み

「行政法」とは行政関連の法律約2000本の総称

社会基盤は、行政が作ったルール「行政法」の下に成り立っています。といっても、憲法や民法、刑法といった六法のように、行政法という名の法律はありません。約2000本もの法律で成り立つ行政ルールの総称を「行政法」と呼んでいるのです。行政法は、身近なところに関わっています。緊急事態宣言に関わる新型コロナウイルス対策の特別措置法も、行政法です。街づくりに関わる建築物や商業施設の規制も行政法の分野です。

道路交通法の規制は誰がどんな理由で決めている?

最も身近な行政法の一つが、道路交通法でしょう。徒歩や自転車で通行するときもそうですが、自動車の運転免許を取得すると、これまで以上に道路標識を意識する機会が増えるでしょう。日本の道路には、さまざまなルールが設けられています。一方通行、駐車禁止、速度規制などです。しかし世界に目を向けると、そのような道路ばかりではありません。例えばドイツの高速道路「アウトバーン」の速度は、基本的に無制限です。日本ではなかなか考えられないことですが、ドイツでは高速道路の速度制限をめぐって、裁判で争われたこともあります。では、なぜ日本の道路にはさまざまな規制があるのでしょうか。それを理解するためには、誰がどのような理由で交通ルールを定めているかを知る必要があります。

交通ルールを決定するのは公安委員会

日本の場合、交通ルールの決定権は、都道府県の公安委員会にあります。交通安全のため、秩序を守るために決定されることが大前提ですが、人がにぎわう街づくりのため、騒音軽減のため、環境保護のためといった理由で規制を設けるケースもあります。そういう理由なら、本来これらは住民との距離が近い市町村が担うべき課題であり、市民の意見が反映されなければなりません。ですが、今の日本では専ら公安委員会(実質的には警察)が勝手に決定しているのが現状です。このように行政法をたどると、現代日本が抱えるさまざまな課題が見えてくるのです。

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駒澤大学 法学部 法律学科 准教授 髙田 実宗 先生

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メッセージ

私たちの暮らしは、さまざまなルールに囲まれています。そのルールに疑問を持つことが行政法の学びの第一歩です。あなたにとっての身近なルールは、校則でしょう。ただ「規則だから従う」のではなく、自分たちはどうしてこのルールを守っているのかを考えることが大事です。もしそのルールの根拠に納得がいかない場合や、時代に合っていないと感じる場合には、議論を交わすことも重要です。
行政法は社会のルールを定める法律です。行政法を学べば、その裏にある課題も見えるので、世の中の実態を知ることができます。

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駒澤大学は、2022年で開校140周年を迎えました。その豊かな伝統を守りながら、時代の状況に即した改革を行い、7学部17学科を擁する総合大学となりました。本学の特徴は、緑ゆたかで広大な駒沢オリンピック公園に隣接する閑静な環境にあり、全学部の学生が4年間を、ひとつのキャンパスで学習していることです。そのため、学部の垣根を越えて、充実した教育システムが用意されています。そして、近年の就職不況のなかにあっても、毎年高い就職率を誇っています。