世界的な話だけど、私たちの生活に密着している国際法
国際法ってどんなもの?
国際法とは、一言でいうと「国際社会の法」ですが、紙に書かれている「条約」と、書かれていない「慣習法」とを合わせたものです。慣習法が条約になったり、条約が慣習法になったりもします。パリ協定や京都議定書、GATT(ガット)、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)などの条約はニュースで目にすることもあるでしょう。日本が国会を通して締結する条約は年間20本程度ですが、国会を通さない「行政取極」を含めると年間300本近いので、日々世界中で条約は無数に生まれていると考えられます。
現代では技術的な基盤整備の行政取極が非常に多く、今後は科学技術の発展と共に新しい国際法がどんどん出てくるでしょう。私たちの生活は、多くのものごとが国際法で規律されています。日ごろあまり意識することはないかもしれませんが、国際法は生活に密接に関係しているのです。
国際法という法典はない
国際法という1冊の法典はありません。何か一つの事例に対し、どのような国際法を適用できるかは、大量の条約と慣習法の中から調べることになります。今はインターネットで膨大な情報が入手できるようになりましたが、海から宇宙まで範囲が広く、常に内容が新しくなっているので大変な作業です。国際法上未決定のこともまだまだたくさんあります。例えば、国家の領空と宇宙の境目はまだ決まっていないのです。学問自体は分化・専門化しつつあって、全体を俯瞰する広い視野と専門性の高い狭い視野を同時に持つのも国際法研究の特徴です。
国内の話が国際的な話に
2019年、著名な実業家が保釈中に海外に逃亡した事件がありました。日本の警察は原則として日本国内でしか活動できないので、このような場合は相手国と協議して犯罪者をどう取り扱うかを決定します。相手国の警察が日本に協力して犯罪者を逮捕する場合は、「日本法違反」で逮捕することになります。グローバル化が進み、世界を相手にしている現代の日本では、いろいろな場面で国内の話が国際的な話に広がることも珍しくないのです。
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一橋大学 法学部 法律学科 教授 竹村 仁美 先生
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