ビジネスと人権~企業が人権のためにできる取り組み~
人権がビジネスに脅かされている
世界では貧困や格差などの問題が起きており、企業のビジネス活動も人権問題と無関係ではありません。一つの製品やサービスにも、多くの国と企業がサプライチェーンとして関わり、その中で人権に関わる問題が生じます。例えばファストファッションが貧しい国の児童労働や劣悪な労働条件に支えられていたり、スマートフォンに不可欠な希少金属が内戦を繰り返す国から輸入され、その資源をめぐって内戦が拡大し、子どもが誘拐されて兵士にされるといった問題が起こってきました。
国際法の限界
経済はますますグローバル化しているのに対し、企業の規制は各国の法律に任せられています。そうしたグローバルな企業活動を国際法で規制しようという考えもありますが、各国政府や企業の支持を受けられず、実現しませんでした。国連の「グローバル・コンパクト」のように、心ある企業に自主的な活動を期待する動きもありますが、自社の活動が引き起こす人権問題に取り組むのかどうかや、その取り組み方を企業の自主性に任せるだけでは、問題は解決しませんでした。
企業が人権を守るために
そうした状況がいま、徐々に変わってきています。国連は2011年に「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択し、各国政府、企業、NGO、国際機関などが共に取り組むことができる枠組みを示しました。もともと人権を保護することは各国政府の義務とされていますが、加えて企業が国際法や国内法の下で負う人権を尊重するための責任や、それをビジネス活動の中で実現するための人権デューデリジェンスという仕組みが確認されたのです。この指導原則を実現するための取り組みとして、例えば先進国では、企業がそのサプライチェーンの中で奴隷的な労働が行われていないことや、武力紛争に関係する資源を用いていないことを証明しないと株式市場に上場を続けられず、資金の調達ができないという法律が導入されています。また、人権や環境に十分な関心を払わない企業には投資しないという基準が設けられるなどしています。
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先生情報 / 大学情報
明治学院大学 法学部 グローバル法学科 教授 東澤 靖 先生
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