講義No.14952 経済学 法学

ドイツの「新しい不動産税」に学ぶ

ドイツの「新しい不動産税」に学ぶ

ドイツの不動産税改革

EUでは、通貨は統一していますが、税制は各国が独自に行ってきました。税金には所得税や消費税、酒税など、いくつもの種類があります。EUの主導的立場にあるドイツでの税金の制度を研究することは、EUをはじめヨーロッパの国々が抱える財政的な課題の要因を分析することになります。そこで、ドイツの「不動産税」という、日本の「固定資産税」にあたる税に着目してみましょう。

日本とは異なるドイツの課税基準

ドイツの地価評価は、なんと1964年から60年もの間変わらなかったのですが、2025年にやっと見直されました。長い準備を経て変更されたので、なりゆきを世界も注視しています。
これほど長期間そのままだったのは、東西ドイツの再統一問題もありましたが、ドイツの不動産税が日本とは「徴収の根拠となる基準」が異なっていると考えるとわかりやすいでしょう。両国とも「地方税」ではありますが、日本は3年に一度、全国で土地の公示価格が出されるため、それに基づいて1.4%を掛けて課税額を決めます。課税方式は全国同じです。一方のドイツでは、16の州それぞれが評価の基準を決めてよいことになっており、変更が可能です。

16の州が独自に決められる

そのため、これからドイツの地方自治体がどのように対処していくのか、同一地域の納税者から訴訟が起きる可能性もあり、目が離せません。例えばバイエルン州では、地価評価の変更を受けて、立地に左右される地価での課税をやめて、面積を基準にする方式を打ち出しました。面積は毎年変わることが少なく、額が大きく変わらないというメリットがあります。
過去にドイツでは、持っている不動産に課税される「財産税」がありましたが、ドイツ連邦裁判所は「不平等であり憲法違反」だとして1997年に徴収を廃止しており、話題となりました。納税は国の財政を支える財源です。納税者がいかに納得できる方法で課税するか、ドイツの2025改革は税制を語るうえで大きな影響を世界に与えるでしょう。

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駿河台大学 経済経営学部  教授(学部長) 野田 裕康 先生

駿河台大学経済経営学部 教授(学部長)野田 裕康 先生

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財政学、租税論

メッセージ

大学には、学問をするための多様な可能性があります。私が専門にしている経済経営を学ぶにしても、日本だけでなく外国の制度を学ぶと、日本や世界の動きが見えてくるものです。北欧を含めたヨーロッパの国々が、どのような財政的問題を抱えているかといった探究も、大学ならではの、先生方の幅広く深い知見が役立つことでしょう。もし本学に来たなら、特にヨーロッパの経済を勉強してみませんか。詳しい先生が多いので、視野が広がり、将来したいことが見えてくるかもしれません。

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駿河台大学は、緑豊かな美しい自然環境に恵まれた飯能にキャンパスを持つ、人文・社会科学系の総合大学です。「ひとりひとりの夢とその歩みを支援し、自立を促す教育」を行い、学生と教員が討論を重ねる少人数制のゼミ教育を重視。資格取得はもちろん、実社会で役立つ、コミュニケーション能力・プレゼンテーション能力などを培います。一生の仲間をつくり、将来に役立つ体験に挑戦するキャンパスライフを応援しています。5学部15コース分野で、法律・経済経営・メディア・観光・スポーツ・心理などを専門的に学べます。