ドイツの「新しい不動産税」に学ぶ

ドイツの不動産税改革
EUでは、通貨は統一していますが、税制は各国が独自に行ってきました。税金には所得税や消費税、酒税など、いくつもの種類があります。EUの主導的立場にあるドイツでの税金の制度を研究することは、EUをはじめヨーロッパの国々が抱える財政的な課題の要因を分析することになります。そこで、ドイツの「不動産税」という、日本の「固定資産税」にあたる税に着目してみましょう。
日本とは異なるドイツの課税基準
ドイツの地価評価は、なんと1964年から60年もの間変わらなかったのですが、2025年にやっと見直されました。長い準備を経て変更されたので、なりゆきを世界も注視しています。
これほど長期間そのままだったのは、東西ドイツの再統一問題もありましたが、ドイツの不動産税が日本とは「徴収の根拠となる基準」が異なっていると考えるとわかりやすいでしょう。両国とも「地方税」ではありますが、日本は3年に一度、全国で土地の公示価格が出されるため、それに基づいて1.4%を掛けて課税額を決めます。課税方式は全国同じです。一方のドイツでは、16の州それぞれが評価の基準を決めてよいことになっており、変更が可能です。
16の州が独自に決められる
そのため、これからドイツの地方自治体がどのように対処していくのか、同一地域の納税者から訴訟が起きる可能性もあり、目が離せません。例えばバイエルン州では、地価評価の変更を受けて、立地に左右される地価での課税をやめて、面積を基準にする方式を打ち出しました。面積は毎年変わることが少なく、額が大きく変わらないというメリットがあります。
過去にドイツでは、持っている不動産に課税される「財産税」がありましたが、ドイツ連邦裁判所は「不平等であり憲法違反」だとして1997年に徴収を廃止しており、話題となりました。納税は国の財政を支える財源です。納税者がいかに納得できる方法で課税するか、ドイツの2025改革は税制を語るうえで大きな影響を世界に与えるでしょう。
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