日本の難民の受け入れ問題から考える平和と人権
難民の受け入れ
世界では戦争や紛争、政治的弾圧が各所で起きており、平和を脅かされた人々が難民となって他国に保護を求めています。こうした難民を保護し、生命の安全や自由を確保するため、「難民条約(「難民の地位に関する条約」と「難民の地位に関する議定書」の総称)」が作成され、140以上の国が締結しています。日本も1970年代後半にベトナム・ラオス・カンボジアから大量の難民が流出したことなどをきっかけに、1981年に難民条約に加入し、住居や就労、教育など、さまざまな面からのサポートを約束しました。しかし、日本は難民の認定基準が他国に比べて圧倒的に厳しく、国際社会から強い批判を受けています。
国際基準とのギャップ
2019年、1万375人が日本に難民申請を行いましたが、認定されたのはわずか44人、2020年も3936人の申請に対して47人の認定にとどまっています。認定を受けられない人々は、働くことも健康保険に加入することもできないため、多くが厳しい生活を強いられており、中には不法滞在として無期限に収容されることもあります。
もう一つの問題は、こうした事実が国内であまり知られていない点です。難民以外にも、日本ではジェンダーギャップ指数(男女格差)が示すとおり、女性の社会的地位が156か国中120位(2021年)と極端に低く、また多くの国が廃止している死刑を「やむを得ない」とする国民が多いなど、平和や人権といった面で国際基準との間に大きなギャップが生じています。
学問にできること
学問の世界には、難民法や人権法を含む国際法研究や、平和について考える平和学といった分野があります。その研究活動においては、法律や条約などについての研究だけでなく、例えば支援を求める人々の生活や裁判の支援といった実践的な活動を通して実態を把握・分析することも有効な手段です。その中で得られた知見をもとに、どこにどのような問題があるのかを具体的に社会に提示して、改善を促していくことができます。
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先生情報 / 大学情報
明治学院大学 国際学部 国際学科 教授 阿部 浩己 先生
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