熱から電気をつくる 地球に優しいセラミックスの可能性
環境問題への関心から注目が集まる熱電材料
自然界に存在する地熱や産業分野で発生する廃熱の多くは有効に利用されていません。地球環境問題への関心が高まる中、世の中にある未利用熱エネルギーを電気エネルギーに変換する材料に注目が集まっています。その熱から電気を作る材料は「熱電材料」と呼ばれ、なかでもセラミックスは大きな可能性を持った材料です。セラミックスと聞くと、陶磁器などの焼き物を思い浮かべるかもしれませんが、実は電子機器の部品にも使われる材料で、私たちの生活を支える重要な役割を担っています。
効率の悪いセラミックスを効率の良い材料に
熱電材料は、およそ200年前に発見された「ゼーベック効果」という、材料の両端に温度差を与えると、その両端間に電位差が生じるという現象により発電します。金属から見つかったこの効果は、すべての材料で生じるのですが、材料によって電位差、つまり起電力が異なります。材料の発電性能を上げるためには、起電力を高くすることの他、電気を流れやすくすること、熱を伝わりにくくすることが必要です。現在使用されている発電性能が比較的高い材料は、高温に弱く、また人や環境にとって必ずしも良いとはいえません。高温に強く、かつ有害な元素を含まないセラミックスはどちらかというと効率の悪い材料ですが、高温でも使用でき、人体に優しく安全な材料です。地球や人に優しいセラミックスを改良することにより、効率良く熱を電気に変換できる材料が望まれています。
熱の伝わり方を制御して発電性能の向上に成功
材料の中に温度差をつけることで起電力を得るので、熱が伝わりやすい材料だと、温度差があってもあっという間に均一になってしまい、発電しない状態になります。熱の伝わり方を制御することが課題の一つでしたが、セラミックスを作るときに固体内の化学反応を利用して、セラミックスの中の結晶構造をわざと乱れさせ、熱を伝わりにくくすることにより、発電性能を上げることに成功しました。
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三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 准教授 橋本 英樹 先生
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