古い機械をセンシングして、町工場の生産性を向上
町工場の現状
新潟県の燕三条地域は、金属加工工場が多く集まるところです。その多くが従業員数十人という小規模な零細企業であり、家族経営の小さな町工場も多く存在しています。しかし、多くの町工場が人手不足や従業員の高齢化などの問題に直面しており、かといって大企業のような設備投資を行うことは難しいため、生産を効率化させるデジタル化や情報化に乗り遅れている状況です。
安価な部品でデジタル化
一方で、現在の技術進歩により、センサのような部品は非常に手軽な価格で手に入るようになりました。そのため、町工場の古い機械でも部分的にセンサを取り付けることで、デジタル化が可能です。例えば、温度・距離の測定や生産数をカウントするセンサを設置すれば、生産の状況をリアルタイムに把握できます。さらに、取得したデータを自動的にクラウドシステムにアップロードすると、年間を通じた生産の推移も分析できます。また、紙に記録していた不良品の数などの情報も、コンピュータシステムのアンケートフォームに入力することで、データとして活用できるようになりました。センサで得た生産数と不良品の数を照合すると、使用した原料に対する完成品の割合である歩留まりを計算できます。
データ分析で生産の効率化を
古い機械のままでは正確なデータが取れなかったため、どんぶり勘定で生産をしていた企業も少なくありません。その結果、優れた製品を作りながらも利益が上がらず、経営上の困難に直面するケースも見られました。しかし、歩留まりや商品の売却益を正しく分析することで、企業のどこに利益の種があるかを特定し、生産の効率化につなげることができます。最近では、世代交代により若手の経営者が増えてきており、データ分析の重要性の認識が進んで、大学との協力により新しいシステムを取り入れる企業も増えてきています。このようなシステムは、工学と経営学の両方の観点から見ることで構築できるものです。
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三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 助教 野口 祐智 先生
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