生産加工は「ものづくりのサイエンス」
身の回りのものづくり
わたしたちの生活にはさまざまな機械が欠かせません。スマートフォンなどの通信機器や炊飯器や電子レンジなどの調理家電、今や体調管理にも使われるようになったスマートウォッチなど、すべての工業製品には生産加工の技術が生かされています。これらの機械部品を高品質で大量かつ安価に製造するには、金属の「切削」や「金型」などの加工技術が必要です。製造工程の機械化や自動化が進んでいる現在でも、職人たちの技術によって支えられている部分が多くあります。
金属材料の加工特性の調査
金属部品の加工は、ただ設計図があればいいというわけではありません。目的にあった材料と、その加工に適した工具と工作機械という3つの要素がそろうことが重要です。この組み合わせによって、加工の精度や生産性は大きく左右されます。例えば、まだ試されていない新しい合金を用いる際には、まず合金の配合による特性を分析し、素材の削りやすさなどの加工特性を調査します。さらに、各種の工具や工作機械との関係性を探り、細かいデータを取っていきます。特にエンジンを構成する部品のように耐熱性や耐久性が求められるものは、削りにくく加工の難易度も高まります。機械の目的に合わせた素材・工具・工作機械の最適な組み合わせを見つけたら、企業の協力も得ながら、すでに存在する製品の改善や研究開発などに生かされていきます。
未来のものづくりのために
金属加工の現場は、職人の長年の勘や経験に基づいた技術に頼っているのが現状です。ゆくゆくはこれらの匠の技術がデータ化され、加工技術の世界にもAI(人工知能)の導入が進められていくでしょう。しかし、職人技をすぐに自動化することは難しく、現在はその前提となるものづくりの環境デザインから見直していく段階です。デジタル化できるところからデジタル化し、ものづくりの現場を働きやすい場所に変えていくことは、技術者の後継者問題に対する1つの答えにもなるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
三条市立大学 工学部 技術・経営工学科 教授 川﨑 一正 先生
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