分解しやすく高機能 プラスチックの環境負荷を低減するには
便利かつ環境に優しいプラスチックを
私たちの身の回りにはさまざまなプラスチック製品があり、プラスチックなしでは人間の生活が成り立たないほどです。一方で、マイクロプラスチックの問題など、廃棄されたプラスチックが環境を汚染しているという側面もあります。そうした現状の中、少しでも環境負荷を減らし、かつ、人の生活に役立つプラスチック材料の研究開発が行われています。
生分解性プラスチックの機能を増やす
廃棄プラスチック問題を解決する方法の一つが、従来のプラスチックを、特定の条件で容易に分解できるプラスチックに置き換えることです。分解の方法には、微生物による分解(生分解)や、光分解などがあります。
分解性のプラスチックに、適切な「官能基」を付けることで、さらに機能性を持たせる研究が行われています。「官能基」とは特定の構造を持つ原子の集まりで、特有の性質や化学的な挙動を示します。この「官能基」を付けることで、もとのプラスチックに新しい性質を追加できます。
生分解性プラスチックの一つであるポリビニルアルコールは、フィルムや接着剤、繊維の原料など、さまざまな製品に使われています。最新の研究では、ポリビニルアルコールにアミノ基という官能基を付けることで、抗菌性、抗ウィルス性が生まれることがわかりました。これによってポリビニルアルコールが医療などさらに幅広い用途で使えると期待されています。
光で簡単に分解できるプラスチック
現在研究が進んでいるのは、光で合成したり分解したりできるプラスチックです。プラスチックは、小さな分子(モノマー)が鎖のようにつながった、分子量の大きな分子(ポリマー)でできています。長い波長の光を当てるとモノマーからポリマーへ変わり、短い波長の光を当てると分解される、新たなプラスチックが研究されています。これは、使用後に簡単に分解できるプラスチックであり、実用化が期待されます。また、できるだけ天然原料を使ってプラスチックを合成する試みも行われています。
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先生情報 / 大学情報
徳島大学 理工学部 理工学科 応用化学システムコース 講師 押村 美幸 先生
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高分子合成化学先生が目指すSDGs
先生への質問
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