マスクの確保から統計データの管理まで 時代が求める医療事務
高まる医療情報の価値
これからの医療では、「医療事務」に携わる人が、病院経営まで担う専門職となることが求められています。病院は診察と治療をしっかりとしていれば問題になりませんでしたが、患者さんに対してのサービスを徹底しなければ、経営も成り立たなくなってきました。医師が必要のない検査をしていないか、薬を過剰に出していないかなど、健康保険事業者の保険請求に対する審査も厳しくなってきています。そんな中、医師に対してもきちんと意見できる医療事務のスペシャリストが求められています。
医療情報の取り扱い
日々報道される新型コロナウイルスの感染者数は、医療機関ごとにカウントされた数値が含まれています。こうした医療統計データの取り扱いは、医療事務職が行っています。そこで役立てられるのが診療情報学という学問です。これは統計やコンピュータといった情報に関する分野と、がんや公衆衛生といった医療分野が合わさった学問分野です。新型コロナの感染者数だけでなく、がん患者の情報、患者の治療履歴など、医療機関にはさまざまなデータが蓄積されています。こうした情報を適切かつ有効に取り扱うことは、医療の質と信頼性を高め、将来起こり得る次のパンデミックへの有効な対策にもなります。
医療物資の調達
新型コロナウイルスの感染拡大において、マスクや防護服といった医療物資の不足も大きな問題になりました。病院でこうした医療物資の調達は、医療事務職の働きによって左右される面もあります。よく「有能な医療事務員がいればその病院は安泰だ」と言われるのは、こうした治療以外の業務を事務員に任せられれば、医師は治療に専念できるからです。
薬や医療、経済、保険、情報といった専門知識を背景に、関係者や患者さんと円滑なコミュニケーションを図り、医師や看護師とともにチーム医療を構成する。そんな力を備えた医療事務職を育てることが、今後の日本の医療には欠かせません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
東北福祉大学 健康科学部 医療経営管理学科 教授 舩渡 忠男 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
診療情報学、病院管理学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?