こころの支援と「デザイン」との関係

自分を変えれば問題解決?
何かをきっかけにパニックになってしまう、物事を忘れてしまう、あるいは持って生まれた障害によって家族や周囲の人たちとすれ違いや問題が起こってしまう、ということがあります。人は、元来備わっている特性や障害は変えにくく、そこを一生懸命変えようとすればするほど問題がこじれて、反対に負のスパイラルに陥ってしまうことも起こり得ます。それならば、人を変えようとするのではなく、その人を取り巻く「デザイン」のほうを変えて解決策を見いだそう、という研究が行われています。
問題に応じてデザインを変える
例えば、耳で聞いて理解することが苦手な人には字幕をつけるなど、「使うモノのデザイン」を変えることで解決策を導き出すこともあります。また登校時に自分の自転車を止めた場所が下校時にはわからなくなってしまう、という学生がいるとします。こうした短期記憶(ワーキングメモリ)が弱いという人は、記憶力を上げる努力をするよりも、誰よりも先に登校してわかりやすい場所に自転車を止める、すなわち「時間のデザイン」を変えることで対応できると考えられます。
これらの例は、人とデザインにズレが生じるのであれば、デザインに人を合わせるのではなく、人にデザインを合わせるという解決方法です。もちろん努力をして変わろうとすることは大切で、そのような意欲を否定するものではありません。しかし生まれ持った特性や障害のある人の場合、当人の努力だけではどうにもできない状況もあります。変わらない部分を変えようとするのではなく、比較的変えやすいデザインを変えるという選択肢もあるのです。
共生社会の実現へ
デザインによる障壁を取り除くことは小さな工夫ではありますが、このようなデザインの見直しの積み重ねが、世界のさまざまな問題や紛争をなくし、共生社会の実現へとつながっていきます。世界を変えるヒントは、意外にも私たちの身近なデザインの中に含まれているかもしれません。
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東北福祉大学総合福祉学部 福祉心理学科 教授三谷 聖也 先生
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