楽しい子育て・夫婦円満のカギ、「2つのゲート」を開け!
子育て期に生じる夫婦の溝
子どもが生まれた夫婦に当然のように起こるのが、「産後クライシス」です。これは夫婦の間に溝ができる現象で、原因は男性と女性の違いにあります。妻は妊娠・出産を通して夫より早く親になり、産後体調が戻らない中で育児の負担がのしかかります。一方、夫は母乳というものがなく、育児の出番が少ないという、妻とは逆の状況です。
約40組の子育て夫婦を調べると、夫婦の間に「2つのゲート(=とびら)」が存在していることがわかりました。1つは、妻が開け閉めする「夫の子どもの世話のゲート」、もう1つは夫が開け閉めする「妻の負担軽減ゲート」です。
2つのゲートを開けよう
子育て夫婦はそれぞれがゲートを開け閉めしていますが、産後クライシスを防ぐには意図的にゲートを開ける必要があります。例えば、妻が開けるゲートでは、夫の抱っこの仕方がぎこちないとき、妻は夫の進歩を信じてほめるなど、夫が楽しく育児ができるようにゲートを開けます。この際、反対に妻がダメ出しをするとゲートは閉まり、夫はやる気をなくしがちです。また、夫が妻の負担軽減ゲートを開けるには、一日の出来事や愚痴など妻の話をよく聞いて共感することが大切です。夫が妻を見守って、様子がおかしいなどいち早く異変に気づくことも重要で、すぐに医療機関に相談すれば、近年、深刻化している産後うつの予防も可能です。
夫婦間の支援も看護の領域
妊娠期の夫婦約50組に、この「2つのゲート」理論=産後クライシス予防プログラムを実施する研究が行われました。その効果を聞くと「無意識に思いやりの言葉をかける機会が増えた(夫)」「夫婦仲が良くなった(妻)」など、役立つという回答が9割近くありました。今後、育児を開始してから学んでも有用だと示せれば、より多くの子育て夫婦に役立つでしょう。また、夫が男性育休や産後パパ育休(出生時育児休業)を取得すると家庭内でどんな問題が起きるか、どう解決できるかを探る必要もあります。こうした夫婦間支援も、看護の大切な役割なのです。
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東北福祉大学 健康科学部 保健看護学科 教授 塩野 悦子 先生
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