患者さんのために「ふたたび食べること」を成功させるコツ
食事は栄養をとるためだけのものではない
高齢者の中には、病気や障がい、食物をかんで飲み下す「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」の機能の衰えなどによって、食事をとることが難しい人がいます。しかし、食事をとらないと、身体は元気でいられません。そういった人たちを対象に、ふたたび食事を摂って自分らしく生きられるように、医師・看護師・介護士・理学療法士・作業療法士・栄養士・言語聴覚士などの多職種が連携し食べるためのリハビリテーションを試みます。なかでも言語聴覚士はもっとも重要な鍵となります。
言語聴覚士は、本人の摂食嚥下機能を科学的にとらえ、安全かつおいしい食事の提供をめざします。いくら安全で栄養価が高いとは言え、本人が拒絶するような液体のような食事ばかり提供することで満足してはいけません。
「口腔ケア」も重要
「口腔(こうくう)ケア」もまた食べるためのリハビリテーションには欠かせません。口腔ケアは、歯を守り食べる機能を高めること、口やのどの衛生により全身の健康増進をめざすことなど、いつまでもおいしく食事が摂れる、健康で長生きをするための下地になります。
本人の食べたい気持ちを引き出すことが成功の鍵
本当は食べられるはずなのに食べない人もいます。その理由は、身体の構造や機能の問題、心理的な問題など、さまざまです。座り方を変えたら首の骨の圧迫が除かれて食べられるようになった人や、お通じを改善させたところ、食欲を取り戻した人もいます。また孫の言葉に励まされて食べるようになった人、話をじっくり聞いてあげることで心を開いて食べるようになった人もいます。患者さんの外側からの積極的な働きかけも大切ですが、多くの場合、本人の内発的な動機が食べる活力を産みます。将来が見えない暗黒に光が差し、ふたたび生きることに希望が持てたとき、人は食べ始めるのです。言語聴覚士は誰かの太陽になる仕事といえるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
愛知学院大学 心身科学部 健康科学科(言語聴覚士コース) 准教授 牧野 日和 先生
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摂食嚥下障害学、口腔衛生学先生が目指すSDGs
先生への質問
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