パラ・パワーリフティング選手の驚異のパワーを解き明かせ!
パラ・パワーリフティングとは
下肢障がい者が重量挙げ競技に挑む「パラ・パワーリフティング」は、パラリンピック種目の1つです。下半身に麻痺のある人や下肢切断者が、ベンチ台に横になって胴体を固定し、胸の上でバーベルを持ち上げるベンチプレスで競います。バーベル移動が左右でわずか0.1秒ずれるだけでバランスは崩れ、失格になってしまうため、筋肉を均等に鍛え、スムーズな動きで力を最大限に発揮するフォームの体得が必要です。そこで、筋肉の構造を考慮しながら、より効果的なトレーニング法を導き出す研究と実践が続いています。具体的には、ベンチプレス時の動きをモーションアナライザという機器で測定し動作解析を行い、さらには筋電図を用いて筋肉の動きを解析します。正しいフォームはケガの予防にもつながります。
トレーニングで脳構造が変わる?
パラ・パワーリフティング選手は、健常者よりも良い記録を出すことがあります。下半身を動かせないのに、足の踏ん張りが効く選手よりも重いバーベルを上げられるのです。ある研究によれば、健常者では働かない脳の一部が、脊髄損傷者では働いていることがわかってきました。障がいがあるがゆえに脳内でなんらかの変化が生じ、動かない機能を補完するような働きが脳のほかの領域で発達する、またそれが強度の高いトレーニングによって促進され、優れたパフォーマンスにつながっている、という可能性が指摘されています。
体の鍛錬もリハビリになる
従来のリハビリは、ケガをする前の状態に戻すことが一般的で、脊髄損傷によって動かなくなった下半身については積極的には行われませんでした。しかし、体を鍛えることで脳の構造が変化し、上肢の筋出力に良い影響を与えるのだとしたら、それも広い意味でのリハビリです。障がい者スポーツに取り組む選手は、トレーニングによって体と脳にどのような変化が生じているのか、運動生理学に基づいた研究が進み相関が明らかになれば、高齢者や一般競技者のリハビリやトレーニングへの応用も期待できます。
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先生情報 / 大学情報
愛知学院大学 心身科学部 健康科学科(スポーツ科学コース) 教授 石田 直章 先生
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