水に沈む氷もある?! 不思議だらけの水を解明する
一般的な物質とは異なる性質
水は科学の視点から見ると謎に満ちています。例えばコップに水と氷を入れると、氷は水に浮きます。しかしほかの物質の場合、氷のような結晶になると分子の密度が高くなるので通常は液体に沈みます。水には一般的な物質の性質の常識が通用しないのです。氷は分子の配置にすき間があるため密度が低くなり、水に浮く性質を持っていることがわかっています。しかし気圧や温度によって密度の異なる別の氷が生じることが分かっていて、「水に沈む氷」など新たな結晶も発見されています。
水を冷やして特性を探る
水は0度以下の過冷却な状態にすると、一般的な物質とは異なる性質が際立ちます。しかし水は過冷却状態ではいずれ氷になってしまうため、液体としての分子の性質が観察しにくくなります。そこでアルコールや塩などほかの液体や物質を混ぜて凝固点を下げるなどの方法で実験が行われています。さまざまな物質を混ぜた水溶液同士の共通点を探れば、水本来の性質を見つけ出せるというわけです。
ただし、混ぜ物の濃度を高くすると結晶化を防ぎやすくなるものの、水の性質は見えにくくなります。そこで濃度が低い水溶液を過冷却状態で観察するための方法が、圧力を変えることです。例えば3000気圧ほどの高圧をかけながら一気に冷却すると、結晶化していない水溶液を作ることができます。
水は特別ではないかも
どのような物質を混ぜた場合でも、水の分子の動きの特徴はそれほど変わらないことがわかってきました。過冷却の状態でも結晶化しないようにすると、低温で水溶液はガラスのような状態になります。このとき水に混ぜた液体や物質の分子はほぼ停止した状態ですが、その周辺で水の分子だけが動いています。つまり混ぜ物を変えた場合でも水の運動そのものはあまり変わらないのです。しかしこの分子の動きが水の特異性だと言い切れるのかは、まだ研究の余地があります。不思議に思われている現象もメカニズムを解明すれば、ほかの物質との共通点が見つかるかもしれません。
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東海大学 理学部 物理学科 講師 佐々木 海渡 先生
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