神経を刺激して学ぶ? 運動技能習得の新たなアプローチ

神経を刺激して学ぶ? 運動技能習得の新たなアプローチ

「ニューロモデュレーション」による運動学習

新しい運動を学習する際、私たちはよく成功している人の動きを見てまねをします。これにより、筋肉や神経の動きに関する情報が脳に送られます。この情報には、運動時の視覚や感覚、筋肉の動き、触覚からの「内在的フィードバック」と、記録やコーチからの指導、自分の動きを撮影した動画を視聴するといった「外在的フィードバック」などが含まれます。こうした従来の学習方法に加えて、視覚や触覚などに働きかけて神経や脳に刺激を与えて運動技能を向上させる「ニューロモデュレーション」が研究されています。

上級者の「視点」からイメージをつかむ

実験では2種類のテストで効果を比較しました。テストAでは、サッカー上級者がリフティングをしている一人称視点の映像を、被験者がヘッドマウントディスプレイで見ながら映像に合わせて体を動かします。そして動きに合わせて、映像と同じタイミングでボールによる刺激を与えました。テストBでは、上級者のリフティング映像を見てから、被験者にそのままリフティングの練習をしてもらいました。その結果、テストAの被験者は、テストBの被験者に比べて早い段階でリフティング技術を習得できることがわかりました。上級者の視点を体験することで視覚野が刺激されて、そのイメージを自分で再現しようとすることで技術の向上が促されたと考えられます。

効率的な運動技能習得

運動の上級者の見ているものを先に脳に学ばせることは、従来の運動技能習得につきものであった「鍛錬」や「忍耐」といったものを軽減して、技術の習得期間を縮める効果があると考えられています。さらに、専用の装置で「耳の後ろから迷走神経を刺激することで集中力を高める手法」を組み合わせた練習法の研究も進んでいます。このようなニューロモデュレーションは、スポーツだけでなく、リハビリにおける運動機能の回復などにも採用されており、効果が期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

東海大学 体育学部 体育学科 教授 山田 洋 先生

東海大学 体育学部 体育学科 教授 山田 洋 先生

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体育学、身体教育学

メッセージ

スポーツ科学の発展により、スポーツの指導方法は日々更新されています。従来のトレーニング指導では筋肉量の増加が重視されていましたが、中高校生の時期はバスケットのドリブルやサッカーのリフティングなど、体の動きをコントロールする神経系のトレーニングをおすすめします。神経は人が産まれてからすぐに発達を始めるため、早い段階からトレーニングすることで身体操作の巧みさが身につきます。最新理論を取り入れた指導には、スポーツ科学や運動生理学の知識が欠かせないのです。

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