空気や水の不規則な動きを数式でひも解く「流体力学」
水や空気の「流れ」を解明する
水の流れに棒を挿すと、その後に渦ができます。風の流れも障害物があるとその後ろに複数の渦が発生します。こうした水や空気の流れを取り扱う物理学が「流体力学」です。流体の動きには、線香の煙のように先端から規則的に真っすぐ立ちのぼる「層流」と、さらに上方の煙でうねるように不規則に広がる「乱流」があります。乱流の動きは不規則に見えますが、その広がり方を何百回、何千回と見ていくと、普遍的な法則が現れます。
人間が式を立てて証明する
乱流の物理を理解するには、数学の方程式として表すことが重要です。例えば、乱流の重要な物理量に「エネルギー散逸率」がありますが、流れによらずなぜ一定の値を取るのか分かっていませんでした。そこで、研究者が地道な手計算を繰り返すことで「流体の支配方程式」からエネルギー散逸率がなぜ一定の値を取るのか、説明に成功したのです。
現代はコンピュータが発展して人間よりも高速に計算ができます。しかし、水や空気の複雑な動きを説明できる新たな数式を考えて、その正しさを証明するのは人間の仕事です。まだ誰もわかっていないことに対して「問いを立てる」ことは人間にしかできないのです。
幅広く応用される流体力学
流体力学は、さまざまな分野で応用されています。身近なところでは、車や船、飛行機などの動きに関する工学分野、大気の流れから天候を読み取る気象学などがあります。さらに、天文の動きをとらえる宇宙流体力学という分野にも発展しています。また、人間が数理理論に基づいて式を立て、実際に空気や水の流れを用いて実験し、スーパーコンピュータなどで解析してその結果をフィードバックする複合的な研究アプローチも登場しています。こうした研究から乱流をコントロールしたりデザインしたりできるようになれば、わたしたちの暮らしの革新につながっていくでしょう。
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