水道水に求められる、安全から「安心・快適」へのステップアップ
ミネラルウォーターを上回る「おいしい水道水」
水道水は、安全基準のもと浄水処理され、利用者のところに届けられています。その水に対して、市民はどのような意識をもっているのでしょうか。
例えば、関西地方では大阪市などを中心に、これまでの浄水処理方法にオゾン処理などを加えた高度浄水処理水が供給されており、水道水と市販のミネラルウォーターを飲み比べる利き水会でも、市民から「水道水の方がおいしい」という結果が出るといった高い評価を得ています。
ますます上がる、水道水への要求レベル
しかし一方で、水道水が実際にどういう使われ方をしているかというと、実際には、おいしくてよい水が供給されているのに、ある意識調査では、そのまま飲んだり料理に使われたりしているのは2割を下回り、ボトルウォーターや浄水器が信頼されているという厳しい結果もあります。それくらい水道水に対する市民の要求レベルが上がってきているのです。
そこで、水道水に対する満足感にどういう因子がどれくらいの強さで関係しているかについて分析していくと、安全に飲めるかどうかだけでなく、「臭い(塩素臭)」や「おいしさ」、「安全性に対する不安感」も重視されていることがわかってきました。これに基づいて、自治体や技術的な支援を行う大学などの研究機関の間では、市民の満足度を上げるための手法についても議論を進めています。
コミュニケーションと技術の両面の改善を進める
その手法には、コミュニケーション面、技術面の2つの側面があります。安全性を数値で示す、情報を提供するなど市民とのコミュニケーションと、残留塩素濃度の低減や異臭を改善するなどの技術施策の検討です。
日本の水道水は現状でもじゅうぶん安全ですが、「安全」から「安心や快適性」という段階へのさらなる改善や新しい技術の開発・導入が求められているということが、こういった調査からも見えてくるのです。
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京都大学 工学部 地球工学科 環境工学コース 教授 伊藤 禎彦 先生
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