楽しく運動をする人を増やすにはどうしたらよいのだろうか?

楽しく運動をする人を増やすにはどうしたらよいのだろうか?

運動不足という深刻な問題

高齢化が急激に進む日本社会では、介護やメタボ症候群による医療財政の逼迫(ひっぱく)などが大きな問題となり、健康づくりのための運動の重要性はますます高まっています。しかし、健康のためにはスポーツをした方がいいとわかっていても、さまざまな理由で運動ができていない人が多く存在します。どうすればより多くの人に楽しく体を動かしてもらえるのか、運動を促す仕組みや仕掛けを考えていく必要があります。
その仕組みや仕掛けを考えるのに運動疫学という学問が貢献します。疫学では、個人ではなくたくさんの人を集めた集団を対象にして、全体の傾向を見ることでさまざまな問題や課題を考えていきます。

日本人と運動の実態

日本人は現在どのくらい運動をしているのでしょうか。成人の運動習慣者の割合をみると、男性よりも女性が少なく、特に20代から40代の女性で運動習慣が低い状況となっています。この調査結果から、家事や育児に時間を取られて運動ができていない女性の現状が浮かび上がります。子どもを対象にした調査では、未就学児と小学生では年収が低い家庭でスポーツクラブの参加率が低く、一方で中高生では年収による違いがないという結果が明らかになりました。これは中高生では、学校の部活動が年収による子どものスポーツ機会の格差を埋める作用をしている可能性が考えられます。

疫学で重要なデータの見方

運動疫学の研究を行う上で、データの見方は重要です。ただ闇雲にデータを見るだけでは間違った結論を導き出してしまうからです。例えば、高血圧患者は健常者よりも塩分摂取量が低いという調査結果が出たとしましょう。この結果を「塩分摂取量が低い(原因)と高血圧になりやすい(結果)」と解釈してしまうのはとても危険です。実際には、「高血圧と診断された(原因)ことで、塩分に気を付けた食事をした(結果)」と解釈するのが自然でしょう。このように、きちんとしたデータの取り方や読み方を学び、エビデンス(科学的根拠)を提示していく必要があるのです。

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東海大学 体育学部 生涯スポーツ学科 講師 松下 宗洋 先生

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スポーツ疫学

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メッセージ

運動疫学という学問分野では、どうすれば楽しく身体を動かす人を増やすかというのは大きな課題の1つですが、そのためのアイデアはほぼ無限大です。自分のふとした思いつきがそのまま研究につながる可能性があるという点は非常に魅力的です。高校生のうちから、いわゆる勉強に加えて、自分なりの考えや疑問を普段の生活日常から見つけ出す能力を養ってほしいです。学問にとって、「この練習に意味はあるのか?」「あの通説は本当なのか?」といったエビデンスを求める批判的姿勢は非常に重要です。

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