見えないものを解析! エンジン・金属加工のシミュレーション技術
自然界にある「流れ」を解析
波の動きや水の流れ、炎のゆらめきや煙の揺らぎなどを解析するための学問が「流体力学」です。自然界の流体の振る舞いについては未解明な部分も多く、近年進化しているAI(人工知能)の機械学習による解析に用いるデータも不足しています。この流体の動きを、シミュレーションなどを用いて精密に説明できる理論を構築し、産業に応用していくのが流体工学です。身近な分野では、自動車や航空機のエンジンの開発などに欠かせない技術となっています。
エンジン内の燃焼をシミュレーション
一般的なエンジンは、燃料を霧状に内部に噴射し、空気との適切な混合状態をつくって燃焼させます。それにより力学的エネルギーを生み出し動力機構に伝えています。燃焼の具合によって、発生する力や燃費の効率は大きく変化します。しかし、稼働中のエンジンは高温となるため、燃焼時の状態を実際に観察することはできません。そこで、エンジン内に噴霧した燃料の状態をシミュレーションできるモデルを開発し、実際のエンジン内に近い状態を調べられるようになりました。この結果を参考に、新しくエンジンをつくる際、内部の形状の改善を行うことで、燃費性能などを向上させられるようになりました。
金属3Dプリンタによるエンジンやドローン
この流体力学を利用したシミュレーション技術には、さまざまな可能性があります。例えば、近年は金属素材を加工できる3Dプリンタも開発され、カスタムメイドの金属パーツの作成が可能となりました。金属3Dプリンタは金属の粉末にレーザを当てて溶かしながら部品を作成します。この際の金属の動きは流体力学を用いたシミュレーションで解析できます。複雑な金属パーツ製作を高精度に制御できるようになれば、ジェットエンジンのような複雑で精密な機械も手軽につくれるようになるでしょう。将来はこの方法でつくられたジェットエンジン搭載の小型ドローンが登場するかもしれません。
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。
先生情報 / 大学情報
島根大学 次世代たたら協創センター 教授 新城 淳史 先生
興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!
流体工学、熱工学、航空宇宙工学先生が目指すSDGs
先生への質問
- 先生の学問へのきっかけは?
- 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?