地球の内部を暴く

地球の内部を暴く

ニュートリノが地球物理学の疑問に迫る

地球物理の分野において長年議論されてきた大きな5つの疑問がありました。
(1) 地球の熱源は何か?
(2) マントルはどのように対流しているか?
(3) 地球内部に原子炉のような余分な熱源はあるのか?
(4) コア(地核)の中には放射性物質がどのくらいあるのか?
(5) 地球内部のカリウム量はどれくらいか?
物質の基本単位である素粒子の一つであるニュートリノは、物質基礎の分野を超えて、これらの疑問の解明に大きく貢献し、3つの疑問に大きく足を踏み込み、残る2つの疑問に対し足を踏み出し始めていることがわかってきました。

地球の内部を見せてくれるニュートリノ

核融合や核分裂ではニュートリノが放出されます。ニュートリノを知ることは、地球内部や太陽内部の観測につながります。原子力発電所からくるニュートリノを利用することで、地球の内部が徐々に明らかにされています。地球の内部を知るための最大のテーマは地熱です。地熱は、地震や火山の噴火の原因にもなり、地球の誕生理論の構築にも重要な役割を示しています。方位磁針などに利用される地磁気をつくるのも地熱です。地熱の発生源は、ウラン、トリウム、カリウムという放射性物質の崩壊が大きな割合を占めていると推定されます。ウランがエネルギーを作ると同時にニュートリノが放出されます。ニュートリノの数を測定すれば、地球の中でどれだけの放射性物質が崩壊し、発熱しているかがわかります。また、動いているマントル内でたまたまウランが濃縮され、連鎖反応を始めると核分裂による熱生成も起こり得ます。そのような反応もニュートリノの方向や数などを測定することで検証が可能です。コアの内部の放射性物質の量や地球内部のカリウム量も、ニュートリノを使えば将来的に測定が可能だとされています。
ニュートリノの性質の解明は、太陽内部の観測や光を反射しない暗黒物質の正体を探る研究、ひいてはなぜ私たちが宇宙に存在するのかという壮大な研究につながっていくのです。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。

先生情報 / 大学情報

東北大学 理学部 物理学科 教授 井上 邦雄 先生

東北大学 理学部 物理学科 教授 井上 邦雄 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

物理学

メッセージ

研究者として面白さを感じる瞬間は、説明できないことに行き当たった時です。説明できないことがあれば、それをきっかけに科学は一気に進歩する可能性を秘めています。これから研究者を志すなら、成熟しきった分野に入ってただ作業を繰り返すのではなく、自らが新しい分野を開拓できるような夢を持ってほしいと思います。ニュートリノの研究は、今まさにそういうことが始まっている分野です。最先端の研究でしか味わえない経験を通じ、広い視野を持った国際的に活躍できる人材をめざしてください。

先生への質問

  • 先生の学問へのきっかけは?
  • 先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東北大学に関心を持ったあなたは

建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造しています。また、研究の成果を社会が直面する諸問題の解決に役立て、指導的人材を育成することによって、平和で公正な人類社会の実現に貢献して行きます。社会から知の拠点として人類社会への貢献を委託されている東北大学の教職員、学生、同窓生が一丸となって、「Challenge」、「Creation」、「Innovation」を合言葉として、価値ある研究・教育を創造して、世界の人々の期待に応えていきたいと考えます。