格子点や素数、いくつある? 「数える・見積もる」ことの奥深さ
格子点の個数
「3億1415万9053個」。よく見ると円周率3.14159265……と数の並びが似ていますね。これは半径1万の円の中にある格子点(座標平面で座標がともに整数である点)の個数です。原点を中心とする半径rの円で、周および内部にある格子点の個数をN(r)とすると、N(r)はだいたいその円の面積S(r)=πr²ぐらいになります。rが1万なら、S(r)は約3億1415万9265です。冒頭の格子点の数との差は212で、かなり小さな差です。数学者はこの見積もりの正確さ、つまりN(r)-S(r)が一般にいかに小さいかを証明しようとしています。
素数の個数
次は「78498個」。これは100万より小さな素数の個数です。2、3、5、7、11、13、……と続く素数は無数にありますが、どれぐらい多いのでしょうか。18世紀の終わりごろ、「対数積分と呼ばれる関数li(x)が素数の個数を抜群によく近似している」という現象が発見されました。対数積分はxが100万のとき約78751で、冒頭の実際の個数との差は253です。xが100億のときの対数積分の値は約455055614。100億以下の素数は455052511個で、対数積分はこの個数を誤差3000程度で見積もります。
証明?
しかし、これらは近似がよいことの状況証拠であって、証明は別です。素数の分布が先の方までわかっているわけではありません。例えばずっと先のあるところに妙に偏って素数が現れるかも知れません。x以下の素数の個数をP(x)とします。P(x)とli(x)の差はどの程度まで小さいと言えるのでしょうか。この問いには多くの数学者が挑んでいますが、考え得る完全な解決にはまだまだ遠い状況です。このP(x)-li(x)や、格子点のところであげたN(r)-S(r)を研究するには、複素関数という、変数が複素数の関数を用います。高校で実数変数の関数の微積分を学びますが、大学数学では複素関数の微積分を学びます。不思議なことに、この複素関数の微積分が証明で大活躍するのです。
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先生情報 / 大学情報
神戸大学 理学部 数学科 教授 谷口 隆 先生
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