精度を上げろ! レーダーを使った津波検知・予測装置

精度を上げろ! レーダーを使った津波検知・予測装置

人命や財産を守る津波予測システム

2011年の東日本大震災では、津波で甚大な被害が出ました。2024年元日の能登半島地震でも多数の津波が観測され、様々な被害が出ています。今後も大規模地震が予想されている日本で、津波被害を最小限に抑えるためには、津波が沿岸に到達する前に、素早く、正確な予測をし、警報を発することが必要です。
現在、津波を検知・予測するシステムとしては、沖合の海底に地震計・水圧計が設置されたS-net/DONET(防災科学技術研究所)や、海面にブイを浮かべて波の状態を調べるGPS波浪計(国土交通省)などがあり、常時、海の状態を観測しています。

海洋レーダーを利用して津波を検知・予測

これらのシステムを補完し、さらに正確で素早い津波予測で防災に貢献しようと研究されているのが、海洋レーダーを使った津波検知・予測システムです。陸上から海に向けて電波を照射し、波浪にぶつかって戻ってきた電波を解析することで、津波の状態を観測します。一基あたり海岸から数十キロ四方の海面を観測できるのが特徴です。
新たなシステムをつくるためには津波観測データが必要ですが、津波は発生頻度が低いためデータの蓄積が不十分です。そこで、コンピュータ上で、地形などの条件を変えながら、津波シミュレーションを繰り返し、沿岸部の津波のデータを抜き出します。これと平常時のレーダーの受信波を合成することで、システム構築のための津波観測データを整備しました。

平常時の観測データも有効活用

レーダーのアンテナは陸上に建てるので、海中に設置するものより低コストで、企業でも設置できるメリットがあります。発電所で活用されている事例もあります。また、災害時だけでなく平常時の波の観測データもとれるため、そのデータを漁業や観光業に販売できます。その収益をシステムの改善、設置や維持管理に当てることができれば、普及も進むでしょう。
レーダーによる津波検知・予測システムが国土に網羅されれば、さらに予測精度も上がっていくと期待されています。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

愛媛大学 工学部 工学科 社会基盤工学コース+社会デザインコース 教授 日向 博文 先生

愛媛大学 工学部 工学科 社会基盤工学コース+社会デザインコース 教授 日向 博文 先生

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工学、環境建設工学

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メッセージ

研究は大変なことも多いですが、達成した時の喜びはその何倍も大きいものです。また、研究を通じた自分の成長もやりがいの一つです。例えば、同じ海の景色から感じ取れることや発想できることが、10年前の自分とは桁違いに変わりました。さらに、その人の育った環境、体験がものの見方をつくりますが、全く同じ環境と体験を経験した人はいないので、それが研究の個性に結び付きます。「目標のためには〇〇を勉強しなくては」などと考え過ぎないで、今自分がいる環境で目の前のことを精一杯学んでください。

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