船舶の安全航行に、情報技術を活用する!
海上での衝突事故は、なぜ起こる?
多くの物資や人を運ぶ船舶は、航行時間や燃費の効率がよく、安全性の高いルートに集中します。一方、海には陸上のように明確な道路や信号機はなく、また船舶は自動車のように急な停止や方向転換は困難です。そのため、混雑する海域では、しばしば衝突事故が発生しています。一般的に船舶は、互いに進行方向や速度といった情報を通信でやり取りしながら、衝突を回避します。しかし、同じ海域内に複数の船舶が混在する状況では、複雑な情報交換や判断が必要です。このような課題に対し、情報科学の数学的な技術を活用しようという研究が進められています。
多くの情報から最適ルートを自動的に探索
カーナビの「最短ルートを探す」という機能には、時間・安全性・燃費といった指標に基づき、多くの情報から最も評価の高い結果を導き出す「探索」「最適化」というアルゴリズム(計算手法)が活用されています。これらの技術をユーザーの目的に応じて、自律的かつ能動的に行うシステムを「エージェント」と言い、複数のエージェントが通信などを介して互いに協調し問題を解決していく仕組みを「マルチエージェントシステム」と言います。マルチエージェントシステムを導入して、自動的に複数の船舶の情報から最適なルートを探索することが可能となれば、船舶の安全航行にもつながるのです。
情報科学技術を、幅広い分野に応用
例えば、あなたが複数の友人と遊びに行く時、スケジュール調整で苦労したことがあると思います。もし、それぞれの希望日の情報をネットワークで共有し、全員が集まれる日時を自動的に知ることができれば、連絡や調整の時間が節約できます。また、大規模な災害や事故などで大勢の負傷者が発生した時、複数の医療機関の受け入れ状況をリアルタイムで集積し、適した搬送先に速やかに誘導できれば、より多くの救命につながります。このように情報科学の技術は、さまざまな分野の問題解決に応用できるのです。
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神戸大学 海事科学部 グローバル輸送科学科 教授 平山 勝敏 先生
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