日本企業が世界で戦うために不可欠なマーケティングの力
キッコーマンの成功
醤油(しょうゆ)メーカーのキッコーマンは、いち早く海外進出に成功した日系企業の一つです。自動車をはじめ多くの日系企業より早い1973年に米国中西部のウィスコンシン州に工場を建設し、醤油の現地生産を開始しました。人は食に対して保守的な面があるため、食品メーカーが海外展開し事業を軌道に乗せることは簡単ではありません。しかし、化学醤油では味わえない風味ある美味しい醸造醤油が当時のアメリカには手に入りづらかったことから差別化に成功し、今では全米の8割のスーパーで販売されるようになりました。米国での販売は伸び続け、現在の同社の海外事業の売上の6割、利益は全体の4分の3を占めています。
世界戦略のあり方
一方、インスタントラーメンの分野では、日本でトップシェアを誇る日清食品よりも東洋水産の方が北米でのシェアが高く、またエースコックはベトナムで大きなシェアを築いています。飲食業界では、サイゼリヤが中国への出店に意欲的で上海市内には千葉市内より多くの店舗が展開されているほどです。吉野家も中国に多数出店しているほか北米、アジアを中心に多店舗化しており、丸亀製麺も海外進出を加速しています。各社がどの国に出店しているかを注意深く見てみると、マーケティング戦略の違いを読み取ることができます。
マーケティングの重要性
日本の食品産業にも、売上高が1兆円規模の巨大企業がありますが、ネスレなどグローバルに展開する世界のトップ企業には及びません。これまで日本企業は、「良いものをつくれば売れる」といった品質を重んじてきました。今後世界に市場を大きく広げるためには、マーケティング力を強化することが欠かせません。また、近い将来途上国と先進国の間で食べ物の争奪戦が起こることも考えられます。日本の食産業がマーケティング力を高めることは、自国の食を守るうえでも重要な意味をもっているのです。
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神田外語大学 外国語学部 国際コミュニケーション学科 国際ビジネスキャリア専攻 教授 鶴岡 公幸 先生
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