島ならではの農業の課題とは? ますます重視される付加価値
離島の農業は不利?
離島の主な産業は農業です。しかし土地が狭かったり本土から遠かったりと、さまざまな面で農業に不利な条件を抱えています。例えば農産物を本土に運ぶためには、船や飛行機が必要です。時間もお金もかかるので、安いものばかり運んでいては利益が出ません。こうした輸送コスト問題などを克服する方法を提案するために、農業経済の研究が行われています。
6次産業化で価値を高める
輸送コストを克服する手段のひとつが「6次産業化」です。農産物の生産、加工、販売を網羅することで、付加価値の高い商品を作ります。その結果、農産物をそのまま出荷するよりも価格を高く設定でき、輸送コストを差し引いても利益が出るのです。例えばソバの実は安いため、島からそのまま移出しても輸送コストで赤字になってしまいます。ソバの実をひいて粉にし、島内にソバ屋を作って地元民や観光客相手に売れば付加価値が高まり、輸送コストも抑えることが可能です。
しかし6次産業化に関わる島の人に聞き取り調査を行うと課題も見えてきます。島の住民だけでは人手や技術が足りないのです。そこで最も時間と技術が必要な加工の一部を本土に依頼する方法もあります。6次産業化だからと、すべてを島内でやらなければならないのではなく、足りない部分やできないことは本土を頼り、農業関係者の負担を下げる必要性もわかってきました。
離島の課題は日本の課題
離島の農業が抱えている課題は、日本全体にも当てはまります。日本自体が島国で、アメリカや中国のような大陸の国に比べると不利な条件下で農業をせざるをえません。例えば、農場の規模を拡大してコストを下げるような手法は、作付面積が小さいため困難です。大規模な農場で作られた輸入品は安く、真っ向から価格競争をしていては日本の農業が成り立たなくなります。日本の農産物を選んでもらうためにも、6次産業化や環境に優しい農法などで付加価値を与えることが求められているのです。
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先生情報 / 大学情報
鹿児島大学 農学部 農学科 農食産業・地域マネジメントプログラム 農業経済学 教授 坂井 教郎 先生
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農業経済学、島嶼農業論先生が目指すSDGs
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