目に見えない微生物を効率的に培養し、目に見える製品に
微生物がつくるさまざまな身近な「もの」
電子顕微鏡でやっと見える細菌やウイルス、酵母、カビなどをまとめて「微生物」と言います。酒や醤油(しょうゆ)、味噌(みそ)などは、微生物の働きを利用してつくられています。それ以外にも、アミノ酸などの食品添加物、乳酸菌関連の食品、そして最近だとプラスチック原料も微生物によってつくられています。微生物を改良することを「育種」と言いますが、それだけですぐに上記のような身近な「もの」をつくることはできません。最終的には個人や企業が利用する製品として安定的に生産しなくてはなりませんから、そのために微生物も大量に必要となります。
培養のカギとなる培地AI技術
いかに効率よく微生物を増やすかを研究するためには、試験管やフラスコではなく、専用のタンク型培養装置を使用します。自動制御によってそれぞれの微生物に適した栄養・酸素を供給し、さらにpHも維持します。そして定期的にサンプルを採取し、微生物の状態を調べます。微生物を増やす土台として重要になるのが、培養装置に仕込む「培地」です。微生物の栄養源となる、いわば滋養強壮剤のようなものです。現在では、最適化された培地を設計する「培地AI技術」も開発されており、これは微生物の培養の効率化において、今後さらに大きな役割を果たしていくものと予想されます。
期待が高まるバイオ燃料の生産
どれだけ可能性を秘めた微生物を育種できたとしても、その微生物を効率的かつ大量に培養できなければ、工業化・製品化は不可能です。微生物をいかに効率よく培養するかという研究は、基礎研究と企業との橋渡しのような役割を担っています。これからも微生物によるさまざまなものづくりが行われていきますが、近年特に注目を集めているのが、微生物で「バイオ燃料」をつくる研究です。石油よりも二酸化炭素排出量が少ない再生可能エネルギーとして、私たちの生活を支える柱になることが期待されています。
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先生情報 / 大学情報
北見工業大学 工学部 地球未来デザイン工学科 バイオ食品工学コース 教授 小西 正朗 先生
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