まちの豊かさとは? その地域らしさや暮らしの価値を考える
個性や面白さが見えにくい?
かつての日本では、地域によって産業などの特徴があり、まちによって暮らし方が違っているのが普通でした。その地域の生業が風景の中にもにじみ出ていたのです。
しかし、今は必要な機能だけを備えた画一的な住宅が全国で立ち並び、まちの個性や面白さが見えにくくなっています。また人口減少社会を迎えた今、大規模な開発をしても人が入らずに建物が空洞化してしまう可能性もあります。そのような中では、建築することを目的にせずに、先に内容や必然性を生み出してから、建物と一緒に育てていくようなイメージが必要です。
「新築みたい」じゃなくていい
ヨーロッパでは石造の建物が中心で、長く使い続けることに価値が置かれています。一方で日本は、木造の建物を「古くなったら壊して建て直す」という文化がありますが、近年では空き家など既存の建物の活用が進められています。リノベーションで大切なのは、新築のように見えることではありません。例えば不ぞろいな板をうまく並べてある趣のある天井や、調湿性の高い土壁などは、職人が少ない、施工効率が悪い、などの理由で今ではほとんど使われないものです。そのような古いものと新しいものを融合させることで、新たな価値が生み出されるのです。また地元の産業や地域の資源、その土地の職人を巻き込んでいくことで、地域内循環にもつながっていきます。
地域らしさを生かす
地域づくりにおける建築デザインには、単に魅力的なだけではなく、まちの歴史や資源、産業など踏まえた上で「どんなまちになったらよいか」という広い視点が必要です。その地域らしさを生かしたまちづくりをすると、まちに愛着が生まれてコミュニティへの関心の高い人たちが集まってきます。そんなエリアに、暮らし方をつくる仕掛けとして共用のサウナやアウトドアテントを置くと何が起こるでしょうか。ワクワクするような「自分たちならでは」の暮らしを日常で積み重ねていくことが、豊かなまちを形作ることにもなるのです。
参考資料
※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。
※夢ナビ講義の内容に関するお問い合わせには対応しておりません。