地震研究の方法を変えた、地球深部探査船「ちきゅう」
間接的なデータしかなかったこれまでの地震研究
地震の研究は、これまでは地震計、GPSなどのデータや、地上でアクセス可能な古い活断層の調査によって行われてきました。つまり、間接的なデータしかなく、最も重要な震源の活断層に触れることはできませんでした。なぜなら、震源が地下深くにあるからです。しかし、地球深部探査船「ちきゅう」の登場によって、水深2000m、そこからさらに5000m地下の断層の地質を調査することが可能になりました。これは、地震のメカニズムを解明するうえで画期的なことです。
地震を引き起こすのは「固着すべり」
地震は岩盤のずれによって起こることがわかっています。しかし、岩盤がずれれば必ず地震が起こるわけではありません。問題はずれ方で、ゆっくりずれれば地震は起きませんが、急激にずれると地震になります。この違いを決めるのは、岩盤と岩盤との間の摩擦です。摩擦が小さければ滑りやすいので、徐々に動きます。それに対して、摩擦が大きいと最初は動きませんが、力が加わると徐々に摩擦力が大きくなり、限界点を超えると一気にずれが生じるのです。これを「固着すべり」と呼び、大地震の起こるメカニズムです。固着すべりをする地震発生帯の周りには、摩擦の小さな断層があり、震源は深くもなく浅くもないある程度の深さのところにあります。
常識が通用しない超大地震
ところが、2011年の東北地方太平洋沖地震では、この常識は通用しませんでした。すべりが断層の先端まで及び、すべりの長さは通常は数m のところ、80mに達したのです。常識では、地震発生帯と周りのそれ以外の部分は独立していると考えられていますが、複合的に力が働いたと考えられます。固着すべりでため込まれたエネルギーだけが地震の原因と考えると、大地震が起こってからしばらく地震は起きませんが、必ずしもそうではないことがわかりました。地球深部探査船「ちきゅう」は、このような地震の複雑なメカニズムを明らかにしてくれるのです。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 理学部 地球圏システム科学科 教授 坂口 有人 先生
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