講義No.12874 生物学

光合成に利用する光の「色」を切り換えるスイッチタンパク質

光合成に利用する光の「色」を切り換えるスイッチタンパク質

信号のように色が変わる光スイッチタンパク質

「シアノバクテリア」は光合成を行う原核生物です。シアノバクテリアは、周りに赤い光があれば、赤い光を吸収できるタンパク質を作り、反対に緑色の光があれば、緑色の光を吸収できるタンパク質を作ることによって、効率よく光合成を行います。このように、赤吸収モードと緑吸収モードを切り替えているのが、シアノバクテリアに備わっている光スイッチタンパク質です。このタンパク質は、緑色光と赤色光をあてると、信号のように色が変わります。このタンパク質の光を受容する仕組みを解き明かすための研究が行われています。

光スイッチタンパク質の発見

シアノバクテリアの光スイッチタンパク質は、ビリン色素という光を吸収する発色団と、それを保持するタンパク質の部分から構成されています。これまでの研究により、光が当たるとビリンの構造が変化して水素イオンが着脱し、それによってビリンの吸収する光の色が緑色光もしくは赤色光へと変化するのことがわかってきました。
実は水素イオンの重要性が発見されたのは、ちょっとした実験のミスがきっかけでした。緩衝液のpHを間違えて入れてしまった結果、光スイッチタンパク質溶液の色が変わったため、水素イオンとの関連性に偶然気づくことができたのです。

光スイッチタンパク質におけるユニークな構造

光スイッチタンパク質の構造を調べるため、X線結晶構造解析を行ったところ、タンパク質の内部に水分子の通ることができる穴が空いていることがわかりました。このような構造はこれまでに報告例がなく「穴あきバケツ構造」と名付けられました。水素イオンがこの穴を通って出入りすることで、ビリンの吸収する光の色が変化すると考えらています。今後は、この穴の構造が光の照射によってどのように変化していくのか、詳細な解析が進められていくでしょう。

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豊橋技術科学大学 工学部 応用化学・生命工学系 准教授 広瀬 侑 先生

豊橋技術科学大学 工学部 応用化学・生命工学系 准教授 広瀬 侑 先生

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光生物学

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メッセージ

私が光スイッチタンパク質の仕組みと水素イオンの関係に気づいたのは偶然がきっかけでした。しかし、その偶然をキャッチできたのは、それまでに実験に打ち込むことができたからであったと考えると、必然であったかもしれません。いつ訪れるかわからない偶然のために研究に打ち込むためには、その研究対象を自分が好きになるというのがとても重要です。ぜひいろいろなことを経験し、試行錯誤を繰り返して、自分が本当にやりたいもの、好きになれるものを見つけてください。

先生への質問

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豊橋技術科学大学に関心を持ったあなたは

本学は、平成28年10月に創立40周年を迎えた工学系単科大学で、世界に開かれたトップクラスの工学系大学をめざしています。社会産業構造の変化、グローバル化時代に対応した人材育成の要求に対応するため、「基幹産業を支える先端的技術分野」と「持続的発展社会のための先導的技術分野」の2つの柱(5課程)で成り立っています。卒業生・修了生は「実践的・指導的技術者」として日本を代表する企業で活躍しています。