口の中だけでなく喉や鼻の病気も扱う「口腔細菌学」
さまざまな病気を起こすレンサ球菌
口の中やその周辺には300種類以上の細菌が棲んでいると言われます。その中のひとつ、レンサ球菌は数珠のように丸い菌が連鎖した形の菌で、棲んでいる場所によって引き起こす病気が違います。
例えば、口の中にいる「う蝕レンサ球菌」は虫歯を起こします。また、あなたも小さい頃、喉に潰瘍ができてひどく痛くなる溶連菌性咽頭炎に罹ったことがあるかもしれません。これもレンサ球菌の一種である「化膿レンサ球菌」が喉で引き起こす感染症なのです。
遺伝子を突き止め、仕組みを解明
実は、同じ化膿レンサ球菌でも、病気を引き起こす悪いタイプとそうでないタイプがあり、悪いタイプが体調の悪いときに入ると症状が出ると考えられています。では、その仕組みをどのように解明していくのでしょうか。
多くの病気を起こす因子は、タンパク質が絡んだものが多いと言われます。菌はいろいろなタンパク質を持っているので、対象となるタンパク質を構成する遺伝情報(ゲノム)を調べ、原因となりそうな遺伝子を特定します。そして、その遺伝子だけを人工的につぶしたものに置き換えたときに、病原因子となるタンパク質が作られず病原性が低くなるかどうかを確認することで、タイプの特定や仕組みの解明に近づいていくのです。
病原因子を制御し免疫をつけるワクチンの開発に
このようにして病原因子とその仕組みがわかれば、それを制御する手段であるワクチンの開発へとつながります。現在は、咽頭炎の治療に細菌そのものを攻撃して治す抗生物質が広く使われていますが、病原因子を制御し病気にならない免疫力をつけるためのワクチンができれば、世界で年間数千万人の子どもがつらい思いをしている咽頭炎の予防が可能になるでしょう。
このような研究分野を「口腔細菌学(口腔微生物学)」といい、歯だけでなく口やその周辺領域である鼻、喉、上気道までを対象にしています。歯学や医学、生物学などと密接に関わりながら研究が展開されているのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪大学 歯学部 微生物学講座 教授 川端 重忠 先生
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