食糧が減ってしまう? 農学の発展で食糧危機を回避せよ!
慎重な判断が必要な種まきの時期
パンの原料の小麦は、秋に種をまいて初夏に収穫しますが、梅雨入り前に収穫しないとダメージを受けてしまいます。乾燥地帯の植物なので、雨が苦手なのです。しかし、十分に実らないうちに収穫すると品質が低下しますから、種まきの時期には慎重な判断が必要です。
1カ月くらい早く種をまけばいいと思うかもしれませんが、麦は日長時間に反応して花をつける「長日作物」なので、1カ月早く種をまいたからといって1カ月早く収穫できるわけではありません。また、種まきの時期が適切でないと、生命力の弱い「幼穂(ようすい)」が出てすぐに真冬が来るので、寒さによる害が発生する恐れがあります。
肥料を与える時期や量でパンの味が変わる?
小麦粉に含まれるタンパク質が多めでないと、おいしいパンになりません。タンパク質の原料となるのは窒素なので、小麦の実に十分な量のタンパク質を蓄積させるには、成育中のどの時期に、どんな肥料をどれくらい与えるかも重要な課題です。
小麦をはじめ、品質の良い農作物を、より多く収穫するにはどうすればいいのか、作物の特性や、栽培地域の気温、日照量、水はけの良さ、種まきと収穫の時期など、さまざまな角度から研究するのが「農学」の面白さです。
農学の発展で食糧危機を防ぐ
日本の食糧自給率は約40%と、世界屈指の低さです。何らかの理由で食糧の輸入ができなくなったら、現在の40%の量しか食べられなくなるということです。この状況を改善するため、政府は稲作農家に対し、イネと麦との「二毛作」を推奨するようになりました。国内では、ほとんど行われなくなった二毛作ですが、近年の農学研究の結果、イネ栽培の時期と麦栽培の時期とで田んぼの環境が大幅に変化することで、特定の病原菌などが住み続けないというメリットがあることが明らかになりました。このように、農学分野の研究が発展すれば食糧危機を未然に防ぐことができるかもしれません。
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先生情報 / 大学情報
山口大学 農学部 生物資源環境科学科 教授 高橋 肇 先生
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