作物の状態をセンシングして生産を効率化する「スマート農業」

作物の状態をセンシングして生産を効率化する「スマート農業」

日本の農業問題を解決するスマート農業

日本の農業は高齢化が進み、農業人口も減少しています。この問題を解決するひとつの手段が「スマート農業」です。スマート農業とは、農作物の生育状態や環境、栽培記録といった情報を活用して、生産を効率化するものです。そこで利用されるのが、AI(人工知能)やロボット技術、ICT(情報通信技術)などです。センサやカメラなどによって得られた情報はクラウドに保存され、必要に応じてプログラムで処理されます。そこから生育状況や栽培環境を把握して、次の栽培手段を決定します。従来は、目で見て判断したり、手書きで記録していたので、負担となっていました。

画像やセンサからさまざまな情報を取得

植物の状態を把握するには、画像データが有効です。得られた画像データから、作物の形や大きさを確認したり、葉の色の変化で作物の状態を把握したりできます。また、作物の生育状況を葉の温度から知ることもできます。生育が順調だと、光合成と同時に蒸散が起こり、葉の温度が下がるためです。さらに、葉緑素は赤外線を多く反射するため、赤外線カメラを搭載したドローンが活用されています。これらの情報は定期的に記録され、その瞬間だけでなく、時間経過でとらえることができます。さらに、GPSとセンサを連動して、場所ごとの土の肥料濃度や水分量などを把握し、気温や光、湿度、CO₂濃度のデータと合わせて、最適な環境の実現に役立てることができます。

AIが判断して栽培する時代へ

現在は、得られた情報をもとに人が判断しています。しかし、今後は栽培情報をビッグデータ化することでAIに判断も任せる方向に進んでいくでしょう。情報取得についても、植物の状態を非破壊かつ適切に把握する、より信頼性が高いシステム構築が行われています。さらに、気象情報や市場情報なども活用することで、必要な時期に必要な農産物を提供できるようになり、農家の収入の安定化やフードロスの削減も期待されます。このように、持続可能な農業の実現に向けた研究が行われています。

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先生情報 / 大学情報

山口大学 農学部 生物資源環境科学科 教授 荊木 康臣 先生

山口大学 農学部 生物資源環境科学科 教授 荊木 康臣 先生

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農業工学、農業環境工学

メッセージ

農学は、「課題解決型の総合科学」といわれています。生命や食料、環境といった広い分野に関わる課題を解決する学問だからです。解析手法も、化学や生物学、物理学といった幅広い学問が関係しています。例えば、光、温度、物質の濃度などさまざまなデータを取り扱っていて、その処理にもAI(人工知能)や統計など数学的な知識が必要になります。
農学はデータサイエンスとも深い関わりがあります。ですから、興味があるなら高校時代はぜひ数学の力を身につけておいてください。

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