神秘的、しかも役に立つ! ~あなたの知らない量子の世界~

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量子コンピュータはなぜ速い?

電子や光子など、それ以上分割できない粒のことを、量子といいます。量子にはさまざまな特性があり、その特性を生かしてコンピュータや通信、人工知能などへの利用が期待されています。
量子の重要な特性のひとつに、重ね合わせができるということがあります。例えば、量子を使わない古典的なコンピュータでは、0と1を組み合わせて順々に命令や情報を扱います。しかし、量子は0と1を同時に実現できるのです。つまり、量子が2つ並んでいるだけで、古典的なコンピュータでいうところの00、01、10、11を一度に表すことができ、操作を繰り返さなくてよい分、計算が速くなるのです。

安全な通信

また量子は分割できないので、安全な通信に向いています。光ファイバー通信は大量の光に同時に同じ信号が乗っているので、途中で分割されて情報を盗まれる可能性があります。しかし、1個の光子に情報を乗せてピンポイントで相手に送ることができれば、誰にも盗聴されない安全な通信ができます。それを途中で観測しようとすると量子は壊れてしまいますし、また量子はコピーできないので、元の情報をコピーして一部を盗み取るということもできません。究極的に安全な通信ができる可能性を秘めているのです。

量子の世界は神秘的

また、量子は重ねあわせで多くの状態を一度に扱えるので、何が最小(あるいは最大)となるかを探す、組み合わせ最適化問題との相性が良いとも言われています。例えば、商人がいくつかの地点を回って帰ってくるのには、どのルートを使うのが最も効率がいいか(巡回セールスマン問題)や、薬をつくる際に、どういう分子をつくったら狙った薬効が出るか(たんぱく質の折りたたみ問題)といった問題も、量子を使った計算によって計算時間を劇的に短縮できると考えられます。量子の魅力は、私たちが住む世界の常識では考えられないような現象を引き起こす神秘性にあります。人工知能との相性も抜群で、その特性をうまく利用すれば、科学はますます発展すると考えられます。

※夢ナビ講義は各講師の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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先生情報 / 大学情報

新潟大学 創生学部  教授 熊野 英和 先生

新潟大学 創生学部 教授 熊野 英和 先生

興味が湧いてきたら、この学問がオススメ!

量子力学、量子情報科学

メッセージ

興味を持っていろいろなことに挑戦してみてください。大事なのは、どんどん失敗することです。成功することより、失敗して学ぶことの方が百倍多いからです。今はいろいろな情報が手に入りやすくなっていて、実際にやらずともわかった気になりやすいのですが、自分で手を動かしてやってみると、情報が断片的で不十分であることがよくわかるはずです。
臆せずに挑戦する中で、自分だけの気づきを無視せずに拾いあげ、その疑問を追究していく過程にこそ、科学のおもしろさ、醍醐味があります。

先生への質問

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新潟大学は教育面を最も重視し、学生が自らの専門を深く極めるばかりでなく、広い視野をもち、物事を総合的に判断する力を身につけること、及び実践と体験を通したきめ細かい教育を行うことによって、学生一人一人の個性を伸ばすことを目指しています。さらに、教養教育と専門教育を融合させた教育プログラムを提供し、特定の課題・分野の学習成果を認証したり、異なる学部の学生と教職員で構成されるグループが地域住民とのふれあいを通じて人間的成長を目指すなど、本学の理念である「自立と創生」に基づく学生育成を実践しています。