見えない世界に計算で迫る! 素粒子物理と「場の量子論」
素粒子の振る舞いは特殊?
身の回りにある物質を分子、原子、原子核と細かく分解していった時、最終的に現れる最小単位のことを「素粒子」と呼びます。例えば電子は、現在の物理学では素粒子のひとつだと考えられています。素粒子同士の反応は目に見えない小さな世界で起こるため、反応の前後で粒子の種類が変わるなど、私たちの直感では想像できない不思議な現象を数多く引き起こします。素粒子物理学の研究者たちは理論計算や実験によって、このような素粒子の振る舞いを解明しようとしています。
小さな世界を記述する「場の量子論」
現代物理学で素粒子の振る舞いを正しく記述すると考えられている理論が「場の量子論」です。場の量子論では時間と空間の各点に自由度のある「場」を考え、場の量子力学によって素粒子の振る舞いを記述します。粒子を生み出したり消したりする場を考えることで、粒子の種類が変わる過程を記述できるのです。これにより、例えば同じ速さで逆向きに進む2つの電子が衝突した際、どのような現象が何割の確率で起こるかを予測できます。
超対称性を持つ理論を考えて謎を解く
しかし素粒子の間に強力な力が働く場合は、場の量子論の計算は非常に困難です。例えば陽子は3つのクォークが強力な力で結合してできており、そこからクォークを単体で取り出すことはできないと知られていますが、これを計算で示すことは困難です。このような問題を乗り越えるため、理論に「超対称性」と呼ばれる特殊な性質を持たせる手法が考えられました。この手法では、現実には見つかっていない粒子を導入する必要がありますが、それにより理論的な計算が可能になります。計算可能となった理論を調べることで、現実の現象についても物理的直感を得ようというわけです。また超対称性を持つ理論は、素粒子論と重力理論を融合する「超弦理論」とも深く関わっているため、超弦理論の様々な手法を用いて調べることもできます。超対称性や超弦理論を用いることで、素粒子の性質により深く迫るための模索が続けられているのです。
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先生情報 / 大学情報
大阪公立大学 理学部 物理学科 准教授 西中 崇博 先生
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