なぜ女性のリーダーは少ないのか? 見えないバイアスを可視化!
意識しにくい心の働きを可視化する
私たちは、社会の中で知らず知らずのうちに「ジェンダーステレオタイプ」を身につけています。例えば、「男性はリーダーシップがある」「女性は協調性がある」といった固定観念です。これらの思い込みは半ば無意識のうちに起こるため自分では気づきにくいものですが、実は私たちの意識や行動にさまざまな影響を与えています。社会心理学では、そうした自分では意識しにくい心の働きを実験や調査を通して可視化し、人の社会的行動の法則性を探究していきます。
好意的性差別の影響を探る
例えば、女子中学生が数学のテストで優秀な成績を収めたとします。それに対して教師が「女子なのにすごいね」と声をかけた場合、「すごいね」のみ声をかけた場合に比べて数学への意欲が下がるという実験結果があります。このように、たとえ相手を褒めていても、その根底にジェンダーステレオタイプが隠れているような言動を「好意的性差別」と呼びます。また、職場において、女性の外見に関するポジティブなコメントをしたり、難しい仕事を「気の毒だから」という理由で女性には任せないようにすることも、好意的性差別に当たります。これらは一見すると女性に対する称賛や思いやりのようですが、実際には女性の自尊心を低下させたり、認知課題の成績を低下させるなどのネガティブな影響を与えることが明らかになっています。
多様性を生かすリーダーシップ
女性のリーダーが少ない背景には、ジェンダーステレオタイプに基づく言動の影響があると考えられます。これからの社会で、性別、国籍、障がいの有無など、多様な背景を持つ人々の誰もが活躍できる組織をつくるには、まずリーダー自身がジェンダーステレオタイプをはじめとする無意識のバイアスを自覚することが大切です。バイアスが他者の可能性を狭めてしまうかもしれないということを自覚して、そのような先入観にとらわれずに、その人自身を理解しようとすることが、誰もが活躍できる社会に近づくための一歩になるでしょう。
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先生情報 / 大学情報
広島大学 総合科学部 総合科学科 教授 坂田 桐子 先生
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